なぜ、エディ・ジョーンズは「タリーズ」を選んだのか

人間関係を築いていくなかで、「相手の話を聞く」のはとても大切だと思います。

仕事仲間でも、家族でも、友人同士でも、相手を理解するには相手の話を「聞く」ことが欠かせないからです。

「いつ、どこで、どのタイミングで」聞くのかも大事かなと思います。

カフェで話を聞くとして、「いつ」聞くのか。日差しが入り込んで、店内が明るい時間帯にするのか。店内が落ち着いた雰囲気に包まれる夕方から夜にするのか。

カフェのどこに座るのか。窓際の席にするのか、店の奥にするのか。できるだけ静かな場所にするのか、賑やかな雰囲気を選ぶのか。座りかたもひとつではありません。ふたりなら向き合って座るのが一般的ですが、横並びで聞いたほうがいいかもしれない。斜めに座るのもありです。

シチュエーションも大事でしょう。コーヒーを飲みながらにするのか、お酒を吞みながらにするか。お酒を吞むとしても、お店の種類はたくさんあって、それぞれに雰囲気が変わってきます。

ラグビーを通して、様々な国籍の指導者や選手と接してきました。外国籍の人たちは、日本人に比べて「聞く姿勢」をうまく作り出すイメージです。シチュエーションの選びかたがうまい。真剣度の高いミーティングとか打ち合わせは会議室で、カジュアルな話はコーヒーを持ってきて「ちょっと話さない?」と誘ってきたり。

僕が日本代表に招集されていた当時のヘッドコーチ、エディー・ジョーンズさんもうまかったですね。最初にふたりで会ったのは、お互いにとって便利な場所にあるタリーズでした。そこで「1年間、ジャパンのキャプテンをやってほしい」と言われたのです。

写真=iStock.com/tupungato
※写真はイメージです

カフェではなくホテルのラウンジとか、クラブハウスのミーティングルームで言われたら、ちょっと身構えてしまったかもしれません。僕らラグビー関係者が「ジャパン」と呼ぶ日本代表のキャプテンは、大変な名誉とともに大きな責任を背負うからです。けれど、明るい雰囲気の店内で言われたことで、気を楽にしてもらえたような感じがします。

外国人の方は「今日はこれとこれを決める」というのがはっきりしているので、非常に効率がいい。「イエス」と「ノー」がはっきりしているので、コミュニケーションがストレートでどんどん進んでいく。時間もきっちり区切る印象があります。

廣瀬俊朗『相談される力 誰もに居場所をつくる55の考え』(光文社)

一方、日本人は「今日はこれとこれを決める」というものが決まっていない前提でも、ゴールへ持っていくことがうまいと感じます。モヤッとしたところから話がスタートしても、最終的に着地点を見つけられる、と。行間を読むとか間とか独特で面白いですね。

どちらのスタイルでも、大切なのは「相手へのリスペクトを根底にした聞く姿勢」なのでしょう。相手は受け入れられていると感じて初めて、ちゃんと話してくれたり良い判断をしてくれます。

それから、自分の意見をしっかりと伝えて、同意したことには責任を持つことも。オンとオフを問わずに、自分が「やる」といったことはきちんとやることを心掛けています。

それが次のタイミングで廣瀬に話をしにいこう、廣瀬の話を聞いてみたいと思ってもらえることにつながります。