そしてミツォタキス首相は、2022年中にギリシャ北部コザニ県のプトレマイダで稼働する予定である国営電力会社(PPC)の火力発電所(プトレマイダ5)に関して、2028年まで石炭を燃料に使い続けると発表した。従来の計画だと、プトレマイダ5は2025年まで石炭を燃料に利用するが、翌2026年からは脱炭素化対策として天然ガスを燃料にする方針であった。

同時にミツォタキス首相は、今後の天然ガスの供給量や価格動向に応じて、2023年までに順次閉鎖する予定であったプトレマイダ5以外の石炭火力発電所に関しても、稼働を延長させる可能性に言及している。ミツォタキス首相は2021年9月、ギリシャにある石炭火力発電所を2025年までに全廃する方針を示していたが、それを大きく修正するかたちとなった。

なお英BPの統計によると、2020年時点で、ギリシャの石炭生産量は1399万8000トン、EU加盟国の中で5番目に多かった。とはいえこの10年で、脱炭素化のトレンドを受けて石炭の生産量は75%も減少していた。この動きと歩調を合わせる形でギリシャの電源構成は天然ガスや再エネへのシフトが進み、電源構成に占める石炭火力の割合も52%から14%まで低下していた。

脱炭素を止められないドイツは再エネ投資の強化を選択

他方でドイツは、再生可能エネルギー(再エネ)への投資の強化という道を選択した。オーラフ・ショルツ首相率いる連立政権は4月6日、各種エネルギー関連法を改正する包括法案(通称「イースターパッケージ」)を閣議決定した。そのうちの改正再エネ法の中に、電源構成に占める再エネの割合を2030年までに現状の倍となる80%に引き上げる目標を盛り込んだ。

出所=欧州連合統計局

この「イースターパッケージ」には、2035年までに電力部門における温室効果ガス排出量の実質ゼロを達成するという目標も盛り込まれた。いずれの目標にも、連立政権の一翼を担う環境政党である「同盟90/緑の党」の意向が強く反映されている。また一部の報道によると、再エネ投資の強化に必要となる財源には、環境投資のために積み立てられた基金が充てられる模様である。

これに先立ちショルツ政権は、3月8日に原発の稼働の延長案を否決しており、今年中の脱原発の実現を優先する方針を改めて示していた。先述の通り、ギリシャはロシアのウクライナ侵攻を受けて脱ロシアの観点から石炭火力の延命を図ったわけだが、対照的にドイツは再エネ投資の強化を通じて脱炭素化に向けた動きを加速させる戦術に打って出たかたちとなった。