ルディー氏は言う。

「富裕層のソーシャル消費として有名なのが、アメリカン・エキスプレスのカードを一回使うたびに1セントが自由の女神の修復に寄付されるキャンペーンですが、これが成功したのは、成果が具体的に目に見える形になっていたからです。ソーシャル消費は理性に訴えかけてもダメ。抽象的な形ではうまくいきません。湾岸戦争が起きたときに、世界中の人が何に同情したかというと死んだ人たちじゃなくて、油まみれの鳥でしたよね。それは、感情に訴えかけていたからなんです」

あまりイメージできないような遠方の国の貧しい子どもたちを助けるプロジェクトよりも、自分がふだん目にしているホームレス向けの職業訓練所や仕事が見つかるまでの住居となる寮やアパートの建設のほうが遙かに感情に働きかける。何かに協力したのだという達成感も得られやすい。

「他人から褒められ、社会的に評価されると脳が快感を得る。報酬系と呼ばれる脳の一部が活性化します。企業は、富裕層の報酬系が喜ぶような高額商品を企画し、いまあなたがお金を使わなかったら日本経済は困るんだということを上手に教えてあげなくてはいけません。それこそがマーケティングですよ。お金持ちならその商品を買って当然、買わないと恥ずかしい、その商品を買うことが社会への貢献につながるというメッセージを広報活動を通して広げていくべきです」(ルディー氏)

※すべて雑誌掲載当時

(永井 浩=撮影)