ロシアとの交戦を避けたい思惑が透けて見える
ウクライナ軍の戦闘機(ミグ29)はロシア製のため、ロシア製の戦闘機を保有するポーランドなどは、供与に前向きの姿勢を見せていた。ただ実際にポーランドの基地からウクライナに直接戦闘機を供与すれば、ロシアとの戦闘に巻き込まれる恐れがある。そこでポーランドは、ロシア製の戦闘機28機を、ドイツの米軍基地に輸送するという計画を発表した。米軍基地経由での戦闘機引き渡しを念頭に置いた発表である。
しかし米国は、米軍基地から飛び立った航空機がウクライナを巡りロシアと争っている空域に侵入するという懸念を招くとし、この提案を却下した。第3次世界大戦を回避するというのは名目で、実際には西側諸国がロシアとの交戦を避けたいという思惑が透けて見えてしまったとの批判も多い。ロシア側もこの報道の隙を突く形で、停戦合意のハードルを引上げている状況である。
3月11日にはプーチン大統領は、ウクライナとの協議で一定の前向きな動きがあったと述べたものの、即座にクレバ外相が否定するなど、ロシア側の方向性を読み取ることは難しい。経済制裁の影響で追い詰められたプーチン大統領が激高して、「⑤第3次世界大戦勃発」につながる極端な策を取る可能性を指摘する声も増えつつある。
今月中の停戦を優先させる可能性が高い
一方で国連憲章を無視し、ウクライナへ全面侵攻をしたロシア側も国際世論の総バッシングを受け、長期戦を避けたい思惑も見え隠れしている。そのため「①紛争の泥沼化」や、停戦合意でウクライナ側だけが一方的に全面降伏する「②ウクライナの全面占領」の事態は避けられるとの見方も根強い。
どのシナリオが実現するかは、停戦交渉の回数やそれまでの戦況に左右される。ただ現時点では、これ以上の損失を避けたいロシア側と、国土を全て焦土に変えるよりは、と考えるウクライナ側とで、「③ウクライナの部分占領・ロシア軍駐留」や「④ウクライナ東部の独立承認・ロシア軍の段階的撤退」を視野に今月中の停戦を優先させるという可能性が高いといえる。
いずれにしろ、今回の紛争は東スラブ人同士の凄惨な闘いとしてウクライナ市民の記憶から永遠に消し去ることはできないであろう。