経常収支の赤字長期化による円安で輸入インフレが加速
ここ最近は、これまでの海外投資などからの果実である「所得収支」が大きく黒字となっているために「貿易収支」+「サービス収支」に赤字が出ても、全体の経常収支レベルでは黒字を維持できました。ところが、ここにきてエネルギーの輸入額が大きく増加しているために、1月は経常収支が1兆2000億円近くの赤字となっています(図表3)。
このことは、日本が海外から稼げなくなっている、ということを意味します。この経常収支の赤字状態が長期化すれば円の信用度にも影響し、円安をもたらす可能性があります。円安はさらなる輸入インフレを加速することにもなりかねません。
この原稿を書いている時点では、まだ発表されていませんが、米国ではインフレに対応するために3月15日、16日に行われる中央銀行(FRB)の公開市場委員会(FOMC)で利上げが発表される予定です。金融引き締めに大きく舵を切るのです。
一方、日銀は、10年国債利回りの上限(0.25%)を死守するために、市中から無制限に国債を買い入れ、資金を放出することを発表しています。これまで以上の緩和策に打って出るわけです。
米国は引き締めであるのに対して、日本は緩和。これがさらなる円安を招く可能性があり、インフレにまったく対抗できません。そこにウクライナ情勢というさらに強力なインフレ要因が追加されるのです。
このままでは、不況下のインフレである「スタグフレーション」となる恐れもあります。日銀は、経済の不安定化を招く不確定要因を山ほど抱えることとなるのです。
「ロシアの次は中国」同じことが起こる可能性がある
将来的にはさらなる不安要因があります。
今、欧州経済や西側経済はロシアを切り離す動きを加速化させています。エネルギーや希少金属など資源分野で、世界はロシアなしでのやりくりの模索を始めています。それ以外の業種でも、一時的か恒久的かは不明であるものの、工場の停止や撤退の動きも急速に広まっています。多くの業種でロシア排除が進み、それが長期化する可能性もあります。
もっと気になるのは、お隣の中国です。
中国では習近平主席が2021年に「6年以内に台湾を統一する」と公言しました。軍事的侵攻をとならなかったとしても、強硬的な手段を選択すれば、米国はじめ西側諸国は今回ロシアに対してとった経済制裁を科す可能性があります。中国の孤立化がロシアのように進むことも懸念され、これは、経済的に密接な日本にとってかなり大きな問題となります。
いずれにしても、日本のインフレ進行度と、それに対する日銀の対応、ロシア・中国・米国・西側諸国の動きからは目が離せません。
ウクライナに平和が戻ることを心より願っています。