時間をかけて新卒を教育するには、離職率を下げる必要があった。家賃補助やリフレッシュ休暇などの福利厚生を充実させたり、懇親会や部活動で社内活性化を図るなど、日本的経営に範をとった施策を重ねた結果、離職率は目に見えて減っていった。ネットバブル崩壊当時30%だった離職率が、現在では10%未満にまで減少している。
しかし、年功序列制度だけは採用しなかった。同期入社の中で賃金に格差をつけるのは、日本の名門企業でもいまや当たり前のことになっているが、弊社の同期内格差の大きさを知ったら仰天することだろう。弊社は日本的経営を参考にしてはいるが、あくまでも厳しい成果主義を貫いているのだ。
社長である私も、社員を平等に扱おうなどとは考えていない。社長と会食ができるのはMVPを取ったチームやその年に最も活躍した部署など、社員の中でも限られている。優秀な社員は報酬を上げ、待遇を上げ、社長自ら目をかける。徹底して上位にいる人材を伸ばしていく仕組みなのは、それが会社の成長に不可欠だと考えるからだ。
同期の中で賃金に大きな格差がつき、待遇が大きく変わるとなれば、当然、そこに嫉妬が生まれてくる。嫉妬をバネにして頑張る人もいれば、「やってられない」と言って辞めてしまう人もいるかもしれない。しかし、大きな格差がつくことが日常の風景になってしまえば、実はそれほど問題は生じない。慣れてしまえば「こんなものかな」と思え、逆に「自分にもチャンスが訪れるかもしれない」と、前向きに捉えられるようになるものである。
デキる社員は「目つき、姿勢」が違う
成果主義を貫くうえで最も重要なのは、下が上げてくる面白い事業アイデアを、上がきちんと評価できるかどうかである。成果主義は部下のアイデアの質を的確に判断できる上司とセットになっていなければ、たちまち行き詰まってしまう。成果が正当に評価されない成果主義など成り立つわけがない。