1回の出張で1万キロ走って新規店舗を探す

「新規店舗を開発する部隊は現在3人。30代2人と20代1人です。レンタカーを借り、出店を検討している地域へ向かいます。事前に不動産情報を収集してはいますが、実際に店舗を決めるのは彼らの目です。2~3の都市を1人が回ることもあります。5~10店舗ほど見つけて契約してくるまでは帰ってこないので、1万キロ以上は走ることもあるようです。1~2カ月ほど帰ってこないのはザラで、ロックバンドのツアーかと思うぐらいですね」

開発部隊が店を選ぶ場所の基本条件は、駅前や繁華街ではなく、家賃の安い住宅街。さらに、通りからの視認性のよい場所だという。どういうことか。

「人が多い繁華街は家賃が高いですし、多くの方にとってふらっとギョーザを買いに行くような身近な場所ではない。なので、駅前などの優先度は低いです。また、ギョーザの無人販売所は、まだ目新しいモノなので新規のお客さんは入りづらいと思うんです。だから通りから店の中が全て見えるような、視認性の良い場所であることも必須です」

写真提供=餃子の雪松
通りからの視認性はかなり良い。昭島店の外観。

「ただ実際にどこが繁盛店になるかは店を開けてみなければわからないですね。人影が少ない田舎でも、住民同士で各自が気に入った食品を配る文化があるエリアで、1人が大量に買い付けて近所の人に配って大人気店になったなんて例もあります」

開発部隊が見つけた複数の店舗は、ほぼ同時に開店する。そうすることで、配送ルートのムダがないからだ。

「不採算店舗は1店も存在しない」

気になるのはこれだけ拡大した後の勝算だ。過去には短期間で急激に店舗数を拡大したのち、近隣店同士での客の食い合いや、従業員の質の低下などで急失速した飲食チェーンがいくつもある。しかし高野内氏は「飲食チェーン店とは根本的な損益モデルが違う」と真っ向から否定する。

「出店とは言っても、うちは店舗の特性として水回りもいらないし、持ち帰りの冷凍ギョーザを置いておくだけ。電気の動力工事には1カ月ほど時間が掛かりますが、それ以外なら1週間でおおよその店の形ができます」

写真提供=餃子の雪松
店内の様子。奥にある“賽銭箱”のような料金箱にお金を入れる。いまだ盗難の被害はないそう。

「開店資金も一般的な飲食事業FC店の10分の1以下で、家賃も安い場所。人件費も少なく、ランニングコストもほぼ掛からない。なので、これだけ店を出しても過剰投資になりようがないのです。現実にこれまで不採算店舗も閉店した店舗はありません」

店舗それぞれに清掃と現金の回収を担当するスタッフは存在するが、常駐はしていない。ギョーザは本社で在庫を管理し、不足している店に必要分だけを日々ルート配送する。

感覚的には飲食店というよりも自動販売機に近い。