キャストに緊張感が走る「県民の日」
「スプラッシュ・マウンテン」「ビッグサンダー・マウンテン」「ホーンテッドマンション」などの人気アトラクションでは、トラッシュカンがQライン(ゲストが並ぶ列)にある。ゲストが並んでいるところを通るため、「失礼します!」「通らせていただきます!」と声をかけつつの作業となる。
ダンプ担当のときには二輪カートをゲストにぶつけないよう細心の注意を払いつつ、大声で注意を喚起する。ときおりデパートなどで黙ったままお客のそばを大きな荷物を押しながら通っていく店員を見かける。「こういうときには、ちゃんとゲストに声がけしないと」と注意したくなるのは職業病かもしれない。
忘れてはならない混雑日が「県民(都民)の日」である。10月1日は「都民の日」、6月15日は「千葉県民の日」、11月14日は「埼玉県民の日」となっていて、この日は公立の学校などが休みになるので、学生や家族連れが押し寄せる(どういうわけか神奈川県は「県民の日」をもうけていない)。
11月13日の「茨城県民の日」や、11月20日の「山梨県民の日」などにもそれなりの数の県民が来園するのであろう、混雑する。
閉園時間になっても帰らないゲストたち
キャストは勤務する時間帯によって「オープンキャスト」と「クローズキャスト」に分かれる。いわゆる「早番」と「遅番」というやつである。私はクローズキャスト(遅番)としてこの仕事をスタートした。
早寝早起きの私としてはオープンキャスト(早番)のほうが良かったが、とにかく早くキャストデビューをしたかったので、当時はクローズでもオープンでも気にならず、採用されたこと自体が嬉しかった。
クローズキャストの勤務は、時期により異なるが、だいたい午後3時ごろから午後10時半までである。夜10時の閉園時間になるとアナウンスが流れ、ゲストに退場を促す。多くのゲストは閉園時刻に気づき、出口へと向かう。しかし、なかには出口から離れたファンタジーランドにいるのに、閉園のアナウンスをBGMに写真撮影を始めるゲストもいる。きっと人がいない園内での写真を撮りたいのであろう。
その気持ちはわかる。だが、友だち同士で並んで撮影して、次には撮影者を替えては撮影して……を何度も何度も繰り返している人もいる。「閉園時間なので、早くお帰りください」と言うわけにもいかず、微笑みながら、心の中では「もういいだろ」と思っている。