援助を続ければ父母の家計が破綻するのは決定的

ただ、いずれにしろグラフからは援助を続ければ父母の家計が破綻することが見えてきました。最初の電話で母が言っていた「父母が入院したり介護状態になったりしたら資金が心もとない」という以上に、もともと預貯金残高は危うい状態であることもわかります。なぜなら入院費用や介護費用も試算には入れていないばかりか、家電製品や自宅の修繕費などの特別費も考慮していないからです。基本生活費以外の支出を計算に含めれば、赤字に陥る時期は早まります。

このシミュレーションを踏まえ、筆者はこう伝えました。

「援助の果てに破綻して、逆に娘さんに援助を求めることになってしまうよりも、最初から娘さんに心配をかけないようにしたほうがいいかもしれませんね」

その上で、長女への資金援助を行わない場合の預貯金残高の推移も見てもらいました。

前出の父母の平均余命3パターンそれぞれについて、「長女への資金援助を行わない」という条件で試算したのが3色の破線です。

100歳で母死亡時に165万~255万円が残る結果を見て、母親は「実は……」と新たな話を始めました。要点はこのような内容です。

母と父は一人っ子同士。頼れる親族はなく、共働きで頑張ってきた。子供がつつがなく世の中をわたっていくために本当は4年生の大学へ行かせてやりたかったけれど、当時は短大の学費を負担するのが精いっぱいだった。そのため、長女は世間に名を知られるような会社に勤めることができなかった。母には、あまり頼りにならないけれど夫(父)のような伴侶がいるが、長女はそうした存在に巡り合えず一人で苦労しているように見える。だから、少しでも援助をしたい……。

さらに、母親は絞り出すようにこう話してくれました。

「自分の体の中で、何がどうなっているのかよくわからなかったけれど、とにかく苦しくて苦しくて、かかりつけの内科を受診したところ、心療内科を紹介されてカウンセリングを受け、そこで『子供のことなど考えなくていい』と言われました」