子どものいる夫婦の場合、子どもをどちらの扶養とするかについて、夫婦間でよく話し合うことをお勧めします。共働きで子どもが1人の場合、子どもの扶養は収入の多いほうに入れたほうが、所得控除の恩恵は大きくなります。

妻のほうが稼いでいるならば、旧態依然とした男のプライドはかなぐり捨てて、子どもは妻の扶養に入れるべきです。子どもが2人以上になれば状況は少し複雑になりますが、面倒くさがらず、電卓片手に計算しましょう。

税理士が見た「家族不和」という意外なリスク

税理士としては税の話を通して家族仲が深まることを祈るばかりですが、扶養控除が思わぬ家族不和に発展してしまうケースもあります。ある50代の男性会社員は、大学生の娘を扶養に入れて確定申告をしていたところ税務署から突如電話がかかってきました。そこで娘がキャバクラで700万円も稼いでいたことを知らされました。

ライバー(ネットのライブ配信で収入を得ている人)として800万円以上もの収入があった女子大学生の事例もあります。娘の活躍など知るよしもない父親が扶養に入れていたところ、これまた税務署から父親に指摘がいき、扶養から外されたこともありました。

「お父さんの税金が増えて怒られちゃったんだけど、どうすればいいですか」と相談されたので、「税金が増えた分、お父さんにおごればいいと思う」とアドバイスをしました。

老親の年収は聞きづらい、パートナーの稼ぎを把握していない、子どもの別の一面を知りたくない……。お金の話は家族であっても、家族だからこそしづらいものです。しかし、家族間で隠し立てしないこと、これも立派な“節税”対策なのです。

離婚は元日、結婚は大晦日が吉

もしパートナーから離婚を迫られている人がいたら、ハンコを押すのは2022年の元旦まで待ってもらったほうがいいかもしれません。

配偶者や子の扶養控除は12月31日時点の状況で決まります。もし、年内にすっきりさせようと12月31日までに離婚届を提出すると、それまで受けてきた配偶者控除や子の扶養控除が忽然と消え去ることになります。

次のモデルケースを見てください。

<年収750万円の50代男性会社員の場合>
※妻(専業主婦)と息子(21歳大学生)を扶養

・離婚前 所得税41万2900円 住民税44万6500円
・離婚後 所得税61万9200円 住民税52万4500円
→差額 28万4300円(うち所得税は20万6300円)

離婚届を提出するため役所に行くのが1日違うだけで、こんなに税金が高くなってしまうのです。妻も子も失い、さらにはお金まで失う——まさに泣きっ面に蜂です。

結婚予定のカップルはこの逆で、年内に婚姻届を出せばいいことになります。配偶者控除が当てはまる場合は、2022年1月1日(先負)よりも2021年12月31日(友引)の入籍をお勧めします。

12月31日を見据えて粛々と“身辺整理”をすること、これが大事です。

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