負担増を回避できるかもしれないとっておき“防衛策”
そんなところに負担増が襲ってきた。文句の一つもいいたくなるというわけです。
「そうはいっても社会保障費が逼迫していることは事実。介護保険制度を維持するためにも改正には従わざるを得ないというのがわれわれ介護業界にいる者の共通した見解です。補足給付の要件に該当していない多くの人が全額自己負担を受け入れているわけですしね。これまでその恩恵を受けてきた人が異議を唱えても通りにくいのかもしれません」
また、要件に見合うよう預貯金を過少申告したくなるかもしれませんが、そうした不正が見つかると大きなペナルティ(加算金が課せられる)を受けるので絶対にしないほうがいい、とHさんは話します。
しかし、要件を満たすためにできる“防衛策”はあるそうです。
「親の死後などにかかる費用を“先払い”して、預貯金額を、要件を満たす500万~650万円以下にするんです。かける費用としては、たとえば司法書士。親御さんが亡くなった後、相続などの手続きに多くの書類が必要になり、司法書士を頼む必要が生じます。この司法書士には事前予約というか、契約して料金の前払いができるのです。その際、相続税がいくらぐらいかかるのか、調べてもらい、もしかかるようだったら同様に税理士の事前予約と報酬の前払いもしておきます」
「また、葬儀代はどこの葬祭業者も行っているように事前の支払いができます。葬儀の規模や内容によって、払った金額以上にかかることがよくありますが、この金額の範囲で済ませてくれ、と言っておけば大丈夫です。お坊さんへのお布施や戒名代などもかかりますが、これも相談次第では支払いを済ませておける場合があるそうです」
「こうした方面の支払いはいずれも10万円単位と高額になるので、すぐに預貯金は要件を満たす額までになるはずです。親御さんが健在なうちに、こんな手続きをしていたら不謹慎だという思いもあるでしょうが、補助を受けられなくなって、居住費や食費で預貯金がどんどん目減りしていって、亡くなった後の出費を心配するよりはいいのではないでしょうか」
ともあれ介護の負担増が低所得者層に及び始め、こんな防衛策を考えざるを得なくなるほど、社会保障費が逼迫する事態になっていることは覚えておいたほうがよさそうです。