すべてはビジネスチャンスを確実に手に入れるため
それに加えて、11月にサムスン電子は、5G通信や人工知能への対応、およびメタバース関連サービスの拡大を念頭に置いた新しいDRAMを発表した。さらにサムスン電子は、車載半導体分野での取り組みも強化し、5G通信を用いた自動車とネット接続、パワーマネジメント、インフォテインメント(情報の取得とエンタテインメントサービスの活用)に用いられる3つの半導体を発表した。このうちインフォテインメント用の半導体は独フォルクスワーゲンの車載アプリケーションサーバーに採用される。
メタバース、電動化やコネクテッド技術の実装を背景とする自動車の変革によって、最先端のロジック半導体などの需要は増える。ビジネスチャンスを確実に手に入れるために、今回の構造改革によってサムスン電子は全社的な意思決定スピードを速め、新しい発想に基づくモノやサービスの創造と、その実現を支える半導体の創出を強化したい。少し長めの目線で考えると、サムスン電子がさらなる構造改革に踏み込むことも十分に考えられる。
競合よりも早く意思決定することを重視
わが国企業はサムスン電子の事業運営姿勢を学び、成長を実現することを考えるべきだ。今回のサムソン電子の改革によってはっきりしたことは、成長期待の高い最先端分野で競合企業よりも早く意思決定をすることを重視している点だ。特に、設備投資の重要性が格段に高まっている。それはサムスン電子とTSMCの競争を考えるとよく分かる。
複数の部門を持つサムスン電子よりも、ファウンドリ専業のTSMCは設備投資などの意思決定をより迅速に行いやすい。世界経済の環境変化が加速する状況下、意思決定の速さはデジタル化や脱炭素など先端分野での企業の競争力に決定的な影響を与える。
サムスン電子がシェアの差を縮めるためには、さらなるスピードと金額で設備投資を進め、TSMCよりも先に最先端の製造技術を実現しなければならない。サムスン電子が成長の加速化のためにDS部門を分社化する、あるいはファウンドリ事業だけを独立させるといったダイナミックな意思決定が下される展開も想定される。それは、サムスン電子のSET部門がアップルなどとの競争に対応するためにも重要だ。