「なぜ子供の頃、私を奴隷のように扱ったの?」

門脇さんは最近、SNSをきっかけに、両親が毒親だったこと、自分がアダルトチルドレンであることを知ったという。

「母に、できるだけ心地よい余生を過ごしてもらおうと、在宅介護を選択しましたが、私が甘かったのかもしれません。怒り狂った母から、『アンタの病状が悪くなろうと、私が快適に暮らすほうが大事だ! 私を怒らすな!』と言われ、子供の頃のことをいろいろ思い出し、『やっぱり施設に入れよう』と思い直すこともあります。それでも、母が好物のお好み焼きを作り、『ありがとうありがとう』と言って喜んで食べる姿を見ると、『子供の頃に聞きたかった言葉だ』と思いつつ、切なくなります」

2年前、心療内科の医師から申請を勧められ、門脇さんは精神障害者3級を取得した。

「私と母は、互いに依存しながら生きてるんじゃないだろうか……などと余計なこと考えて沈んでしまうこともしばしばです。今の状況を妹に報告しても、必ず返信が『それは大変やな』だけなのはわかっていますが、いつか妹に、『1日だけ介護して』と頼んで、どんなに大変か分からせてやりたいと思います」

写真=iStock.com/SimonSkafar
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以前、「明日デイに行かなかったら、このまま罵倒されながら姉と暮らすか、妹と暮らしてすぐに施設に入れられるか、頑張ってデイに行って私と暮らすか、3択を迫ろうかな」と思っても、結局「母には酷かな」と思い直した門脇さんだが、妹に「1日だけ介護して」と頼むことは、果たしてできるだろうか。

母親と2人暮らしになった門脇さんは、「なぜ子供の頃、私を奴隷のように扱ったの?」と何度か母親に訊ねたことがあるというが、「私は3人とも同じように育てた」と答えるだけだったという。

母親は、分かっていて自己弁護をしたのだろうか。それとも本当に、「3人とも同じように育てた」と思っているのだろうか。前回の、母親からネグレクトを受けて育ち、その母親を姉とともに介護している女性は、「いっそ『アンタが嫌いだから食事を与えなかった』と言ってくれたら、見捨てることができたのに」と言っていた。門脇さんも同じ気持ちだろうか。

「母に対しては義務感も愛情もなく、やりがいも幸せも感じません。たまたまそばにいたから、私が介護をしているだけです」

と淡々と話す門脇さんだが、だとしたら、彼女を動かし続けているのは、彼女自身が言うように、“依存”だけなのだろうか。

門脇さんの主治医は、「怒りや悲しみの感情を心に留めてしまうため、感情が平板化している」と言うが、少なくとも筆者は彼女から、怒りや悲しみ、そして愛情といった感情を確かに感じる。

むしろ母親のほうが、「たまたまそばに残ったのが門脇さんだったから、門脇さんに依存している」ように感じられてせつない。

優しい人、情け深い人が割を食う社会は果たして正常だろうか。いずれにせよ、門脇さんの苦労や頑張りが、いつか報われる日がくることを願ってやまない。

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