環境活動家を政治家がサポートし、その背後には…

ただ、これまでは、CO2削減が人類としての最大の目標とする欧米の主要国の政治家(最先鋒がEUの欧州委員会と米国の民主党の一角)が、活動家の主張を正論とし、その主張や行動をあまり精査せず、一括にサポートしてきた。その背後に、CO2削減でもうけようとする大資本がずらりと控えていることは疑うべくもない。

松田智ほか『SDGsの不都合な真実』(宝島社)

そして、国際環境活動家はいわば実働部隊であり、それにお墨付きを与えているのが国連の事務総長や一部の研究者という構造だ。そして、ここ数年、多くの国民がこの運動に賛同した結果、「気候危機説」はどんどん盛り上がった。この裏に潜む壮大なカラクリについては、12人の共著である『SDGsの不都合な真実 「脱炭素」が世界を救うの大嘘 「地球温暖化」でいったい誰が儲けているのか』(宝島社)に詳しい。ぜひとも参照されたい。

そのうち西ヨーロッパでは、「地球環境正義」のような雰囲気までもが形成されていった。COP26の期間中、グラスゴーでSUVなど大型ガソリン車のタイヤの空気が抜かれるなど嫌がらせが多発したと、複数のメディアが報道しているが、ドイツではそんな事件はたいして珍しいことではない。環境を思う気持ちに駆られた人たちが、環境を破壊していると思われる人に鉄拳を下すのは正義であるという思い込みが横行しているのだ。だから、SUVなどは夜中には路上駐車しない。

なぜトゥンベリ氏はCOP26を欠席したのか

とはいえ、今回、何かが変わったと感じているのは私だけではないはずだ。「気候危機説」は今もなお燃え盛っているが、シャーマ議長が言ったのとは違った意味で、「流れ」が変わり始めている。まず、大きな違いは、トゥンベリ氏がCOP26に参加していなかったこと。

前回のCOP25は、2019年12月にスペインのマドリッドで開催された(2020年はコロナで中止)が、当時のトゥンベリ氏をめぐる大騒動を覚えている読者は多いと思う。その前年、米タイム誌に「世界で最も影響力のある未成年25人」の一人に選ばれていた彼女は、2019年9月、ニューヨークの国連本部で開かれた気候変動サミットに招かれた。

ただ、飛行機に乗ってCO2排出に加担することを潔しとせず、ソーラーパネルと水中タービン発電機を備えたヨットで英国からニューヨークへ渡ったことは、日本でも大きく報じられた。米国に到着後はヨットをヨーロッパへ戻すために数人の乗組員が飛行機でニューヨークへ飛び、船長は飛行機で帰国したという。この後、彼女の国連でのスピーチの強烈さ(“How dare you?”)が世界中で注目され、グレタ・トゥンベリという名前を一躍有名にした。