他社と一線を画すEPICソニーのタイアップ
しかしEPICソニーのタイアップは、そのようなことがなく、楽曲と商品が見事に高め合っている、言わば「美しいタイアップ」が多い。ここらあたりにEPICソニーの才覚を見るのだ。
「美しいタイアップ」として、まず思い浮かぶのが、大沢誉志幸《そして僕は途方に暮れる》(84年)×日清食品カップヌードル。外国人の少女がキスするフリをする映像に、淡々と響く《そして僕は途方に暮れる》のサビ。
カップヌードルはその後、ハウンド・ドッグ《ff(フォルティシモ)》や中村あゆみ《翼の折れたエンジェル》(ともに85年)やEPICソニーからは鈴木雅之《ガラス越しに消えた夏》(86年)や遊佐未森《地図をください》(89年)などをタイアップ起用するが、正直、《そして僕は途方に暮れる》までの「美しいタイアップ」には至らなかった。
また、THE MODS《激しい雨が》(83年)×マクセルのカセットテープ「UDⅠ」も「美しさ」では負けてはいない。こちらは、THE MODS本人たちもCMに出演し、この上ないお披露目効果を持った。キャッチコピーの「音が言葉より痛かった。」もTHE MODSらしく、理想的である。
また、こちらは広告ではなく、テレビ番組とのタイアップだが、87年から放映された日本テレビ系アニメ『シティーハンター』は、TM NETWORK、大沢誉志幸、岡村靖幸、鈴木聖美などが起用され、アニメとしての都会的な内容とリンクして、さしずめアニメ版『eZ』という感じだった。
シャネルズの『ランナウェイ』がタイアップで大成功
と、EPICソニーの「美しいタイアップ」を見てきたが、そんなタイアップを量産できた大きな要因として忘れてはいけないのが、端緒としての、シャネルズ『ランナウェイ』(80年)の大成功だろう。
・商品(パイオニアのラジカセ)の名前も曲名も「ランナウェイ」
・歌い出しがサビからで、歌詞はいきなり「♪ランナウェイ〜」
・少年が家出しようとするCMのストーリーと歌詞の内容も、ほぼ同一
そして、このタイアップから約100万枚の大ヒットが生まれ、海の物とも山の物ともつかない新人バンド=シャネルズが劇的にブレイク、EPICソニー邦楽の屋台骨を作り上げるのである。
つまりは「EPICソニーとは『タイアップ』だった」どころか、そもそもEPICはタイアップから生まれたのである。それもとびきり美しく、とびきり劇的な。