人類は必ずコロナとの戦いに勝つ

長期的視野に立てば、人類は今、感染症に敗北しつつあるのではなく、勝利を手にしつつある。人類を長く苦しめてきた天然痘は1979年にはついに撲滅された。かつては世界中で猛威を振るっていたポリオも、WHOへの感染報告は1988の35万件から2018年の33件へと99%減少し、先進国では既に根絶され、途上国でも制圧が目前に迫っている。

感染症・周産期異常・栄養失調による死者数は1990年から2019年までに1599万人から1019万人へと580万人も減少し、年齢調整済み死亡率は半分以下に低下している(図表2)。コロナ禍の被害は甚大だが、いま私たちが強いられているのは一時的な後退に過ぎない。しかも、その程度は決して大きなものではない。人類はこれまで遥かに恐ろしいパンデミックを乗り越えてきた。コロナとの闘いに人類は必ず勝利を収めるだろう。

グローバル化と資本主義への不当な非難

グローバル化と資本主義は、コロナ禍の元凶と名指しされているが、これほど不当な非難もない。新型コロナウイルスの発生後、僅か1年で画期的なワクチンを開発できたのは、まさにグローバルで活気あふれる資本主義経済の恩恵である。

柿埜真吾『自由と成長の経済学 「人新世」と「脱成長コミュニズム」の罠』(PHP新書)

大方の予想を裏切って効果的で安全なワクチンの開発を極めて僅かな期間に成功させたのは、世界的な医薬品メーカーであるファイザー、バイオンテックやモデルナといったベンチャー企業のグローバルな開発競争だったのである。人類はこれまで資本主義とグローバリゼーションの下で、感染症との戦いに次々と勝利し、正しい方向に向かって進んできたのである。

権威主義国家や社会主義国家がコロナ禍に“効く”という言説の信憑性は、消毒液を注射すれば健康を保てるという主張と同程度である。コロナウイルスは独裁者を恐れたりはしないし、非効率な社会主義経済が感染症対策に特に効率的に機能すると期待する理由は全くない。

危機的な状況に直面すると、今までの常識は通じない、すべてが変わったと称して、怪しげなアイデアを売り込む人がいつの時代にもいるものだが、金融危機は物理法則を無効にはしないし、パンデミックは社会主義を理想の経済体制に変えたりはしない。