どんな家庭の子どもでも手当は一律であるべきか
【増田】そもそも「社会で子どもを育てる」ということを前提に考えた場合、日本の制度設計はどうなのかという疑問が個人的に残ります。家庭環境や経済状況がどんな条件であっても、子どもが等しく教育を受けられ、健全に育っていくことができる環境を整える。そう考えたら、理念としては、児童手当の金額は一律であるべきだと思うんですよね。
以前、フィンランドの保育所を取材したとき、保育料が実質的に無料になるのは、子どもを保育所に入れると児童手当がそのまま保育所に支払われるからだと聞きました。なので、例えば1人目を保育所に入れていたけれど、2人目が生まれて母親が産休・育休で自宅にいるので上の子も自宅で過ごすようになった、という場合には、児童手当が今度は家庭に振り込まれるそうです。
ドイツでは、所得の低い、例えばひとり親世帯への支援などはどうなっていますか。
「奨学金」を返済させる日本は国際水準からズレている
【マライ】わりと手厚いですね。ひとり親の場合は出産時にベビーセットももらえますし、仮に離婚相手が養育費拒否をした場合、国が代わりに支払ってくれます。失業中や低収入で家賃や健康保険料が払えないケースでも、国が代わりに払ってくれます。
これはオプションですけど、例えば「子どもに人並みに習い事をさせたいけれども、収入が少なすぎてできない」という場合、習い事のクーポン券が発行されたりもするんです。これは国ではなく住んでいる自治体単位ですけど、水泳教室とかバイオリン教室とかに通わせることができる。学校の修学旅行代も同様です。
【池上】日本では親の経済格差が子どもの学力格差につながっているというデータがあります。実は私の学生時代も「東大生の親の所得は、他の大学生の親の所得より高い」と言われていました。
もちろん東大生の中にも苦学生はいますが、総じて「恵まれた家庭のお坊ちゃん、お嬢ちゃん」という印象があります。例えば東工大には「家族の中で初めて四年制大学に進学した」という学生を対象にした奨学金制度があるんです。個々の大学にも努力してほしいけど、結局は幼稚園や保育所から高校まで学費を無料にしていく取り組みがもっと必要だよね。
それに日本の「奨学金」の中には、後に返済しなければならないものがあります。これは、国際水準で言えば「学資ローン」であって、奨学金とは言えませんよね。