泥酔運転、麻薬密輸に公金横領…

地元紙によれば、北方領土は人口の自然増がサハリン州で最も多い。これは、若いカップルが多いためとみられ、人口減少や疲弊が進むロシア極東では異例だ。産業の9割は世界有数の周辺漁場を活用した漁業関連で、平均所得は南クリル地区が8万2000ルーブル(12万3000円)。

サハリン州最大の水産コングロマリット、「ギドロストロイ」の企業城下町と化した択捉島の平均所得は非公式集計で12万ルーブル(18万円)。ロシア平均の4万6000ルーブル(6万9000円)よりかなり高く、高収入が人口増につながっているようだ。

ロシア社会に顕著な犯罪や汚職、腐敗は島にも波及している。

地元紙には、「択捉の地区検察当局が、2020年に85件の汚職事件を摘発」「泥酔して車を運転し、事故で自分の娘を死亡させた軍人に禁固3年の刑」「択捉の学校で新型コロナのクラスター」「南クリル地区長が公金横領で辞任」「ウラジオストクから麻薬密輸の動き」といった社会ネタも掲載されている。

サハリン州の通信社サハリン・インフォ提供
択捉島では、飲酒運転による交通事故が多い。

空港・道路整備にジム、サウナ浴場まで

北方4島は長年、中央政府から無視され、インフラの老朽化や輸送の不備、劣悪な医療・サービスなどで厳しい生活環境に置かれたが、プーチン政権は2007年、北方領土を戦略的重要地域として「クリル社会経済発展計画」を導入し、島の近代化に着手した。

毎年日本円で300億~500億円の予算が投入され、空港やアスファルト道路、港湾整備、住宅建設が突貫工事で行われ、くすんだ島の景観は一変した。中国企業の協力で光ファイバー通信線が敷かれ、高速インターネットも開通した。

「国境で」(6月30日発行)によれば、国後ではこの数年間に、巨大なスポーツジム、水産コンビナート、30キロメートルのアスファルト道路、中央病院、文化センター、風力発電設備などが建設された。56年宣言で日本への引き渡しが明記された色丹島でも、文化会館、病院、集合住宅、サウナ浴場が誕生した。

択捉島のインフラ整備は4島で最も進んでいるが、「赤い灯台」(6月23日発行)によれば、中心地、紗那の街を海岸に近い低地から高地に移す方針で、新しい幼稚園や警察署、住宅が高地部に建設されつつある。津波などの災害を防ぐためで、古い施設を撤去し、徐々に高地部に新設する大計画となる。近年、映画館や温泉も相次いで開業した。

風光明媚な択捉島では、観光開発が注目され、東方経済フォーラムの場では、ホテルや温泉、滝、スキー場、展望台、エコトレイルなどを擁する複合的な観光施設「オリエンタル・リゾート」を総額200億ルーブル(300億円)で2025年までに建設する計画が発表された。