今後はモーターが「産業のコメ」になる

それでは、今後もハイペースの変化が続くのだろうか。私なりの見通しはこうである。

いま銀塩フィルムのカメラはデジタルカメラに押されて、よほどの好事家かプロにしか使われていないが、デジタルが出始めたころ、大手フィルムメーカーのトップは「デジタルがフィルムと置き換わるには10年かかる」と公言していた。しかし実際には3年くらいしかかからなかった。

ブラウン管テレビから液晶テレビに置き換わるときも、ソニーの見解は「10年かかる」というものだった。こちらも実際には3年とかからなかった。

つまり「変わってほしくない」立場にある人は、変化のスピードをどうしても甘めに評価する。ここは注意して見ておかなければならない。

「20年における電気自動車の普及率は数%」。自動車大手の予測は各社ともこんなレベルだ。最も大胆な日産自動車でも「10%」にすぎない。今後10年ではほとんど普及しないというのである。

一方で、中国の新興メーカーの中には「半分はいく」と息巻いている会社もある。立場によって予測値はこれほどまでに違うのだ。

もっとも、別の見方をすることもできる。大企業トップはいずれも優秀な方々である。発言とは別に現実的な見通しを持ち、危機感を背に、さまざまな準備を進めているに違いない。

自動車業界の人たちも「しばらくはガソリン車とハイブリッド車の時代が続く」と唱えつつ、万一に備えて、資本提携などを通じ業界再編を急いでいるのではないだろうか。

いずれにしろ、世間でいわれているよりも速いスピードで変化は起きる。その際、一番に風景が変わるのは新興国の市場である。