「ノンアルビールはビールじゃない」という不満

私ごとで恐縮ですが、筆者が経営する会社は女性ばかりのマーケティング会社で、中心は40代です。彼女たちの多くは“お酒好き”で、ノンアルのビールに対し、しょっちゅう「これはビールじゃない」や「大好きなビールの味や香りがしない」などと不満を漏らします。

確かに、日本のノンアル市場におけるビールは、これまで「ビールらしい風味や香りの再現が難しい」とされてきました。

というのも、ビールを醸造した後にアルコールだけを上手に取り除き、ビール本来の風味や香りを残すには、高度な専門技術や蒸留設備が必要だったから。ゆえに、従来は「麦芽エキスを抽出し、後からビール風味で香りづけをする」など、別の手法を取ってきたのです。

ビールの原液からアルコールを抜く技術

ところがアサヒグループホールディングスは、2000年以降、海外進出を強く意識し、欧州や豪州をはじめとする、さまざまな海外企業との買収や提携を盛んに行ってきました。

こうしたなかで、世界の最先端技術に触れ「醸造後のビールからアルコールだけを“抜く”技術に長けていれば、これほどおいしいビールテイスト(微アル)飲料ができるんだ、との発見がありました」と梶浦さん。

アサヒビールが提案する新たな概念「スマートドリンキング」(左)ハイボリーなどの後続も含め横軸で展開。(右)(写真提供=アサヒビール)

そんな微アルの製造技術は、まさにアサヒビールならではの「強み」になる。さらに同社は、微アルを「ビアリー」や9月下旬発売の「アサヒ ハイボリー」(微アルハイボール)など商品単体のものとして終わらせるのでなく、「スマートドリンキング」という新たな「飲み方提案」とともに、横軸で広く展開していこうと考えました。

これが、先の「スマートドリンキング」構想。お酒を飲む人(飲める人)や飲まない(飲めない)人、あるいは同じ人でも飲みたいときとそうでないときなど、アルコールにはさまざまな嗜好や飲用シーンが存在する。

こうしたなかで、微アルを含めた飲み方の選択肢を広げ、多様性を受容できる社会を実現することが、同社の務めである、との考え方です。