『フォースの覚醒』で最初に担当することになったのがファルコン
『スター・ウォーズ』をはじめとして、『インディ・ジョーンズ』『ジュラシック・パーク』『アイアンマン』『アベンジャーズ』など、ハリウッドの超大作を生み出してきた。これまで15のアカデミー視覚効果賞、33のアカデミー科学技術賞を受賞している。
この日入社したのは私を含めて3名で、2名はスタッフ職、私だけがフリーランスである。いい仕事をして認めてもらい、一刻も早く健康保険付きのスタッフになるぞと心に誓う。
その後フリーランス契約の仕事が評価され、
『フォースの覚醒』に参加するハードサーフェス系モデラーは、私を含めて4名。私が最初に担当することになったのは─―ミレニアム・ファルコンだった。まさにヒーローモデル中のヒーローモデル。
さて、ミレニアム・ファルコンだが、実はいくつかのバージョンがある。最初に制作された『エピソード4/新たなる希望』では、直径1.5メートルもある巨大なミレニアム・ファルコンの模型が作られた。これは少し大きすぎて撮影に使いづらかったため、『エピソード5/帝国の逆襲』では80センチメートルほどの小型版模型が作られた。
SF映画における最高傑作の宇宙船を任される戸惑い
これらの模型は、キットバッシングという手法で作られていた。ベースとなる円盤の上や側面のごちゃごちゃした装飾(グリーブリーズと呼ばれる)は、市販のプラモデルからそれらしいパーツを流用して使っていたのだ。
タミヤの戦車部品があちこちに使われているし、前部側面に貼り付いているのはマツダのロータリーエンジンだったりする。1.5メートルと80センチメートルの模型では、縮尺が違うため同じパーツを使えない。だから、2つの模型は細かな部分がかなり違っている。この2つ以外にも、(半分だけの)実物大セットや手のひらサイズの模型も存在し、それらはそれぞれディテールが異なる。
CGで作成するエピソード7のミレニアム・ファルコンは、やはり世間で決定版と呼ばれている直径1.5メートルのエピソード4版をベースにすることになった。エピソード4から30年以上かけてハン・ソロとチューバッカがあちこち改造を加えたという設定で、形を変えず、ディテールのみアップグレードするという方針が決まった。
仕事始めの5月5日、デイブが、模型の3Dスキャンから作ったベースモデルを私に渡してこう言った。
「これをベースにして、ディテールをかっこよく作り込んで」
SF映画における最高傑作の宇宙船を、自分のデザインで作り込んでいいと言うのだ。
喜びと同時に、「私なんかが自由に作っていいのか?」という戸惑いに襲われた。
こうして『スター・ウォーズ』漬けの1年間が始まった。