特にサムスン電子の“急落”は大きい
DRAM価格が調整するとともに、台湾や韓国の株価は上値が抑えられ始めた。7月ごろから韓国の株式市場ではサムスン電子の株価が軟調に推移し、8月に入ると、株価下落が勢いづいた。8月18日までの月初来で、サムスン電子は5.86%下落した。同じ期間、世界の主要半導体関連銘柄で構成されているフィラデルフィア半導体株指数は4.40%、世界最大のファウンドリである台湾積体電路製造(TSMC)は1.03%下落した。
サムスン電子の株価下落率は世界の主要な半導体関連企業の中でも大きい。サムスン電子はファウンドリ事業の強化のために設備投資を積み増し、世界の大手メモリメーカーから、TSMCのような世界の有力ファウンドリ企業への飛躍を目指している。しかし、サムスン電子をDRAMなどメモリ半導体のメーカーとみなす主要投資家は多い。TSMCとサムスン電子にはそれだけ競争力に差がある。
今後、最先端分野の開発競争は一段と激化する
8月に入り、サムスン電子に加えて、米国や台湾のメモリ半導体メーカーの株も売られた。短期的に、世界全体でDRAMの需給逼迫感は徐々に落ち着き、半導体市況には若干の調整圧力がかかる可能性がある。
ただし、やや長めの目線で考えると、一時的な価格の調整を経て、世界の半導体需要は上向き、価格も上昇するだろう。特に、最先端のロジック半導体の製造技術の重要性が高まり、最先端分野の製造技術の開発競争は一段と激化する展開が予想される。
なぜなら、世界経済のデジタル化が加速しているからだ。わが国の工作機械が世界の需要を取り込んでいる背景には、工場の省人化などファクトリーオートメーションの進行がある。遠隔治療やテレワークの浸透も半導体需要を押し上げ、より多くのビッグデータの獲得、保存、分析のニーズは高まる。自動車の分野ではEVなど電動化シフトによってより多く、かつより高性能の半導体が求められる。中長期的に、世界経済全体で、IoT関連の投資は増加する可能性が高い。