春夏シーズンの店頭展開強化に成功

理由2:「健康力を高めたい」というニーズ

花王の調査では、「入浴によって健康力を高めたい」という消費者の動向も明らかになった。2020年に入り、入浴によって「血行を促進させたい」「自律神経を整えたい」「免疫力を高めたい」と答えた人は、それぞれ前年比で5〜10%ほど上昇。日常的な入浴を通して健康増進をのぞむ人が増えていることがわかる。

また、コロナの影響により店頭における陳列状況にも変化が見られた。もともと、メーカーサイドの施策は秋冬が中心。例年、入浴剤は春夏シーズンになると山積み率が低下していたが、2020年からは夏でも入浴剤が使われるようになり、花王は春夏の店頭展開強化を開始。少しずつ成果が見えているという。

「2020年は消費者の入浴剤に求める『健康力ニーズ』に変化がなかったため、コロナ禍で高まった健康志向が年間を通して維持されていることがわかりました。入浴剤が季節商材ではなく年間商材として販売されれば、市場が拡大すると見込んでいます」

2022年のキーワードは「セルフヘルスケア」

さらなる市場拡大の可能性を秘めている入浴剤。仲田さんは、今後の戦略のキーワードは、「セルフヘルスケア」だと話す。外出が制限されがちなコロナ禍では、出社・在宅の不規則な繰り返しにより生活リズムが乱れ、疲れがたまるが、マッサージ施設や温泉、病院などに行きづらい。そのため、日常生活に休息を上手く取り入れたセルフヘルスケアが必要になる。

そのような状況を見越して、花王パーソナルヘルス事業部は今後、高濃度炭酸の「バブメディキュア」の育成に注力するそうだ。現在この商品は、「特に疲れがたまったとき」に使用する商品として打ち出されており、疲労・肩こり・腰痛・冷え性などの悩みを抱えている人をターゲットに据えている。

画像提供=花王
「バブ メディキュア 柑橘の香り」(左)と「バブ メディキュア 森林の香り」(右)

しかし今後は、健康力の向上を目指す人や、自身のメンテナンスに興味関心を持つ人に向けて、年代にとらわれず幅広くメッセージを発信する予定だという。「不調改善」を全面的に謳ったパッケージから、「理想の自分」を描いたパッケージへと、刷新の準備も進められているそうだ。

「2021年秋に予定している『バブメディキュア』リニューアルを機に、高齢者層やファミリー層はもちろん、30〜40代の働き盛りの世代にも、この商品の魅力を伝えていけたらと考えています。今後は、『入浴剤を入れた湯船に浸かることで、誰でも簡単に、入浴時間を自身のメンテナンスタイムに変えられる』というメッセージを積極的に発信していく予定です」