「墓場まで持っていける話」なんてない

3番目は「ウソをつく」。これが一番よくない。ウソをつくと、必ずあとでひっくり返される。〈菅首相長男による官僚接待〉では、総務省幹部が「事業に関する話はしていません」と国会で虚偽の答弁をしたから、事業に関する発言の音声を公開され、国会で認めざるを得なくなった。ウソをついたことで、傷はさらに大きくなったのだ。

ベッキーさんは禁断愛の疑惑が出た時に「友達です」と説明したが、「友達で押し通す予定」というLINEのやりとりが出たことでダメージが倍増した。

トラブルが起きた時は、まず逃げ切れないと覚悟すべきだ。最後までは隠し通せない。嘘もつけない。「墓場まで持っていける話」なんてない。デジタルの時代は、その前提で危機管理に当たるよりほかない。

「五輪開会式の演出案」では橋本会長から抗議が

週刊文春の東京五輪開会式の演出案をめぐる記事(2021年3月25日号)に対して、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長から、抗議と雑誌の発売中止、回収、ネット記事の削除、さらに編集部が入手した幻となった開会式の演出案を廃棄し、内容を一切公表しないことを求める文書が届いた。

週刊文春では、女性演出家が突如、開会式の責任者を交代させられた事実をスクープし、その後、幻となった演出案を紙とデジタルで記事にしていたのだ。

編集部では組織委員会からの要求に対応するため、すぐに文春オンライン上に編集部としての見解を発表。さらに、加藤編集長は〈週刊文春はなぜ五輪組織委員会の「発売中止、回収」要求を拒否するのか 「週刊文春」編集長よりご説明します〉と題する記事を公開した。

「東京五輪は公共性、公益性の高いイベントであり、適切に運営されているかを検証、報道することは報道機関の責務である」として、「著作権法違反や業務妨害にあたるものではない」と組織委員会からの要求には応じられないことを説明。280ページにも及ぶ幻の演出案は、「社外秘」に当たる資料ではないかとの指摘もあったが、公共性、公益性が高く、国民の知る権利に応えるものであると主張した。その後、組織委員会からの要求はない。

「言論の自由」より「読者の知りたい気持ち」に応える

ここでのポイントは、「国民(読者)の知る権利に応える」という部分だ。ジャーナリズムを標榜するメディアはすぐに「言論の自由」を振りかざすが、どうも「教えてやる」という上から目線には違和感がある。あくまでわれわれの仕事は「読者の知りたい気持ち」に応えることではないかと思う。

まるで自慢にはならないが、週刊文春にはたくさんの抗議が送られてくる。中には「法的措置を検討する」と書かれたものもある。法的措置とは、具体的には民事裁判の訴えを指すが、実際に裁判にまで進むことはそれほど多くはない。