「金銭に倫理観やイデオロギーを絡ませるな」
「日本人は『金』といえばすぐ綺麗な金とか汚い金などといって金儲けを軽蔑する。しかし、資本主義社会では金がすべてで、金さえあれば人生の問題の99%が解決する。
金銭に対して汚いという感想を持つのは、言い換えれば『法』を守っているかいないかという一種の倫理観からきているんだ。
けれども、その倫理観は法は完壁だという思い込みの上に成り立っているだけだよ。だって、法律とはどんなものでも人間が作ったものだから、万人に等しく適応して100%完璧ということは絶対にありえない。いかなる秀才が知恵を絞っても、完全な法律を作り、それですべての人間を規制することなんかできっこない。必ず規制できない穴がある。
アメリカではその穴をループホールと呼ぶ。ループホール専門の弁護士さえいるくらいだから合法なんだ。そしてアメリカ政府はループホールを突いてくる人間が多くなったら、また法を修正してゆく。この繰り返しだよ。アメリカ人は法を完璧だなんて思ってないんだ。
とにかく金銭に倫理観やイデオロギーを絡ませることなく、全力で金儲けに体当たりすること。それに尽きる。
『世の中で金と女は仇なり、早く仇に巡り合いたい』という戯れ歌があるが、誰でも本音は早く仇に巡り合いたいんだ。本当だ」
マクドナルド創業者が日本進出に藤田を選んだワケ
藤田がマクドナルドの存在を知ったのは1967年、41歳のときだった。マクドナルドは日本進出を考えていたのだが、当初、藤田は名乗りを上げるつもりはなかった。
そのころ、藤田商店で十分な利益を上げていたし、食品事業の経験もなかったので、ファストフードチェーンの経営に乗り出すつもりはなかったのである。それに彼の耳にはダイエーの中内㓛が権利を手に入れるだろうとの噂も入っていた。
しかし、シカゴでマクドナルドの創業者、レイ・クロックと出会ったことがその後の人生を変える。
「僕はハンバーガーが好きでこの仕事を始めたわけじゃない。好物はきつねうどんだもの。ハンバーガーよりうまいでしょう。
シカゴに行ったとき、レイ・クロックさんに会って、話をしていたら、突然、『フジタ、お前がこの仕事をやらないか』と誘われたんだ。
彼に『なぜ私にやれと言うのか』と尋ねたら、そこにあった箱いっぱいの名刺を指差す。そして『私はマクドナルドをやりたいという日本人には何百人も会った。しかし、みんなぼんくらばかりでどうしようもない。しかし、フジタ、お前はやれる』と言う。
でも、僕は口に入れるものを扱ったことはないと断った。そしたら、いや、そんなことはどうでもいい。あんたは今まで会った日本人が持ってなかったものを持ってるという」