納期がないので意地でも催促しない

つまり、ワークマンでは常に定量的な指標は捨てて、定性的な目標だけを追求しているということだろうか。

「対外的な制度対応を除いた80~90%の仕事に関しては、基本的に納期はいつでもいい。そう宣言している以上、私も意地でも催促をしません(笑)。その代わり、ワークマンの目標達成率は100%なんです。だってできるまでやるんですから。2、3年かかっていいからと言えば、たいていの目標は達成できますよ」

40年前から「しない系」の会社

それがワークマン方式であるのはいいとして、ではなぜ、時間や期限といった定量的な目標ではなく、仕事のクオリティーを上げることや社員のストレスを軽減するといった定性的な目標が選択されるのか、いや、選択することが可能なのだろう?

写真提供=ワークマン
6月にオープンした#ワークマン女子南柏店

「ワークマンは余計なことは一切しない会社です。もちろん社内行事もしませんが、この場合、社内行事をやることで社内のコミュニケーションが良好になることと、そのしわ寄せで残業が生じることのトレードオフになり、ワークマンでは社員の働きやすさ、つまり残業をさせない方がより価値が高いと判断をするわけです。社員の働きやすさを優先するという考え方は、加盟店のオーナーさんの採用にも反映しています」

どういう意味だろう。

「売り上げを最大化するようなガツガツした人は採用せず、自然体で人柄のいい人を選んでいるのです。いくら売り上げが増えたって、人柄が悪くてガツガツした人だと、社員がSVとして訪店した時にプレッシャーがかかるじゃないですか。お客さまに対しても同様で、売り上げ売り上げ言ってるオーナーが、まごころを持って接してくれるとは思えません。だから、人柄で選ぶんです。

このように、どちらか一方の指標を捨て去るには勇気がいりますが、なぜワークマンの現場がそうした勇気を持てるかといえば、ひとつには、ワークマンがすでに40年前から『しない系』の会社であり、90%はしない系のDNAになっていたということがあります。そこに私が、働き方改革や社員のウエル・ビーイングといった要素を10%だけ付け加えたと、こういうことだと思います」

ワークマンが40年前から続く「しない系」の会社であるのは、当然、ワークマンが個人向け(法人を対象としていない)作業服というニッチなジャンルをほぼ独占してきた企業であることと深く関連しているだろう。