ポイントカードでお客の愛は得られない

たとえば、夫婦がそんな要素だけでまともな相思相愛の関係が成立するだろうか。

「あなた、今月は浮気もせずにまじめにがんばってくれたから100ポイントね。ゴミを出してくれたらボーナスポイントよ。ポイントが貯まっているので、夕食か映画に交換する?」

こう考えると、入会無料のポイントカード制度が一番威力を発揮するのは、食品や航空、ホテル、クレジットカード、ガソリンなど、競合との差別化が難しい分野だろう。要するに、ヒルトンとシェラトンという2つのホテルチェーンの最大の違いは、どちらがポイントをたくさんくれるかに尽きるのだ。しかし、そこに問題がある。

小売業者は、単に客が「惰性」で利用しているだけなのに、ロイヤリティと勘違いしているのだ。客は、とりたてて忠誠心も愛着もないのだから、最後まで浮気せずにとどまってくれるわけではない。とどまってくれているのは、競合に乗り換えたところで、体験内容に大した差はないからだ。

写真=iStock.com/Ridofranz
※写真はイメージです

ポイントカードは顧客の体験に紐づかない

ほとんどのポイントカード制度には、もう1つの問題がある。それは「ポイントカードが、体験自体と本質的には無関係」という点だ。要は、ポイントカードで得られるポイントは、ショッピングの体験とは切り離されて、別物になってしまうのである。なぜなら、その日のショッピングという体験が終わらなければ、ポイントは手に入らない。

たとえば、私はスターバックスに行くたびに不思議に思うのだが、オーダーを聞かれ、(商品受け渡し時に呼び出すための)名前を聞かれ、ようやく会員カードアプリがスキャンされる。

最初にアプリをスキャンしておけば、私を名前で呼ぶこともできるし、「いつものでよろしいですか」といった気の利いた応対もできるではないか。そうすれば、私がいつもオートミールクッキーを一緒に買っていることもわかるはずで、「クッキーもいかがですか」と一言添えることも可能だ。

結局、私のポイントカードは、店での体験とまったく無関係であることがわかる。それでは本末転倒だ。そこで強く推奨したいのが、有料会員制の採用である。

有料制にすることで、顧客との関係性を強化できる

有料会員制は、さまざまな面でポイントカード制度に勝る。何よりも有料会員制は、本当にブランドや店舗に思い入れのある顧客を浮かび上がらせる手段になる。

たとえば、アマゾンプライム会員は、非会員に比べてアマゾンでの年間消費額が3.5倍以上に達する。会員制の威力を生かしているブランドは、アマゾンだけではない。