対中攻勢の準備を進めているドイツ

一方、ドイツはというと、まだジェノサイド決議はしていないが、その準備は着々と進めている。その一つが、今年5月、ドイツ帝国軍が20世紀初頭に植民地ナミビアで行った原住民の虐殺を、自ら「ジェノサイド」と認定したこと。近い将来、中国のウイグルの非難決議をすることになった際、ナミビアの大量虐殺を逆非難されてつまづくのは困るので、これを早々に解決したのだろう。

川口マーン惠美『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』(ワック)

ドイツ政府は謝罪し、ナミビア政府に11兆ユーロ(1500億円)の支援を約束したが、考えようによれば、これで解決できれば安いものだ。この投資の一部は、おそらくドイツ企業にも還元されるだろう。

まだある。6月25日にはサプライチェーン法が連邦議会参議院で承認され、成立した。これは、ドイツが外国で調達する原材料や部品は、その生産過程の全レベルで人権蹂躙や環境破壊があってはならないということを定めた法律で、2023年から施行される。ターゲットはもちろん中国。これで人権蹂躙や環境破壊がなくなるわけではないだろうが、方向性は正しい。今、こういう法律を作ったということに意味があると言える。

 

どう見ても日本のほうが重症だ

2019年、ドイツにとっての中国は、これまでの「パートナー」から「体制上のライバル」という位置付けに変わった。さらに、ドイツ連邦軍がインド太平洋にフリゲート艦を出すといったことで、日本では、ドイツもようやく対中包囲網に加わると期待する向きもある。だが、船は1993年に起工して1996年に就役したものだという。これなら中国もおそらく怒らない。

今、ドイツは中国と米国の狭間で、したたかに生き残る道を探っている最中だ。いずれ中国とコラボする可能性さえ否定できないかもしれない。

だから、しっかり対中包囲網に加わらなければならないのは、日本のほうだ。それなのに現実には、中国人が二束三文の土地を高く買ってくれるといえばよろこんで売り、企業は大手から零細まで、急速に中国資本に乗っ取られていく。それどころか、本気でやれば日本経済を間違いなく崩壊に導くと思われる「脱炭素」の波にしっかり乗っているのが中国で、日本のメガソーラー部門への進出も著しい。

このままいけば、日本の家庭用の電気代は高騰し、貧富の差はかつてないほど広がるだろう。しかし、エネルギーを中国に握られることがどんなに恐ろしいことか、警鐘を鳴らす政治家さえいない。

要するに、平和ボケはどう見ても日本のほうが重症だ。このままでは、尖閣諸島も平和裡に中国領となっていたということになりかねない。

危うい現状は、外から見ているとさらに顕著で、戦慄を覚える。手遅れにならないうちに日本人が白昼夢から目覚め、危機に対してちゃんとアンテナを張るよう、切に願う。

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