こうして、スタジオ内の空気は均質化していく
そもそもコメンテーターは番組の方針に合った人が選ばれているので、明らかな齟齬は発生しないケースが多いのだが、そのうえで「番組を共に作り上げるチームの一員」として動くことが暗に求められるため、スタジオ内の空気はどうしても均質化するのである。「羽鳥慎一モーニングショー」では時折、弁護士の山口真由氏が玉川徹氏に反論するような場面も見られるが、番組の「王」たる玉川氏が食ってかかり、山口氏も大人の対応をするので、一方向の流れは妨げられることなく進んでしまう。
同番組には昨年12月まで、弁護士の菅野朋子氏が火曜日に出演していた。同氏は他の出演者の発言に対して「おかしい」と思えば率直に意見する、どちらかといえば一方向の流れに従わないタイプのコメンテーターだった。玉川氏に対しても臆せず反論する場面が多く、議論を深めてくれるので注目していたのだが、なぜか降板してしまった。
まぁ弁護士の仕事も忙しいはずだし、「自分の考えを述べただけで猛烈に叩かれるなんて、うぜぇ」という気持ちもあったのだろう──私はそう解釈している。だから菅野氏の「降板」という判断(番組側が切ったかもしれないが)を、私は心から尊重したい。コメンテーターなぞ、自説を曲げてまで、無駄に忖度してまで続けるような仕事ではない。
専門家の皆さん、メディア出演バブルに浮かれてない?
最後に「テレビの魔力」について触れておこう。
以前、「24時間テレビ」に出演した一般人の男性と放送翌日に新宿歌舞伎町を歩いたことがある。すると、すれ違う多くの人々が指をさして、同行者に「あの人、24時間テレビに出てなかった?」などと話している光景に出くわした。地上波テレビはそれだけすさまじい影響力を持っている。
昨年来テレビに登場している感染症の専門家たちも、おそらく街を歩くだけでチラチラと視線を感じたり、「○○先生ですか? いつもテレビで見てます」などと声をかけられたりしていることだろう。ツイッターのフォロワーは爆増し、コメント欄には「○○先生の正しいご指摘のおかげでこの程度の感染で日本は守られています。くれぐれもお身体をお大事にしてください」などと絶賛キャーキャーコメントが数多く寄せられる。
目立つ快感を覚え、お手軽な小遣い稼ぎにもすっかり慣れてしまった専門家の皆さまがたは、コロナ騒動が完全に収まってしまうことに、かすかなさみしさを感じているかもしれない。なかにはあと数年、なんなら一生この狂騒曲がジワジワと続いてくれたら……なんてことを密かに期待している専門家すらいるのではないか。
また、専門家たちを担ぎ上げ、「煽れば煽るだけ数字が取れる」と国民に過度な恐怖心を与え続けたメディアも看過してはならない。専門家とメディアは、もはや終えどきがわからない共犯関係にある。まったく、いつまでコロナ騒動を継続させるつもりなのだろうか。
ついには「ワクチンを打ってもマスクをしろ」などと専門家様がしたり顔で言い始め、メディアも喜々としてそれを流布する。この人たちのせいで、コロナ狂想曲は永遠に終わらないかもしれない。
・日本のコロナ禍がなかなか収束しないのは、とにかく危機感を持たせることありきで自説を振り回す専門家たちと、それを流布するメディアが、いつまでも「コロナは危ない」と視聴者を煽り続けていることにも一因がある。
・頻繁にメディア出演する専門家には「制作サイドにとって使い勝手がよい」という理由だけで声がかかっている人も多い。決して「専門家として優秀」とはいえないケースもあるから注意が必要だ。