コロナ禍が後押ししてくれた

【村上】ESGが世界的に注目されることもあって、ESG重視型ファンドはこれからたくさん出てくると思います。でも私たちの場合は、最近話題になっているからESGをうたっているわけではなくて、数十年ずっと研究を重ねてきました。そこは大きな強みだと思っています。

ジャーナリスト 白河桃子さん(撮影=遠藤素子)

【白河】実際、御社は日本初のESG重視型ファンドとしても注目を集めていますね。キャシーさんも長年ESGの重要性を訴え続けてこられましたが、MPower Partnersへの参加を決断したのは、何がきっかけになったのでしょうか。

【キャシー】タイミング的には、実はコロナ禍が後押しになりました。元からESGを浸透させたい、日本経済を活性化したいという思いはありましたが、村上さんの誘いがあってからコロナ禍が本格化し、在宅勤務になったことでじっくり考える時間ができたんですよ。その間、ベンチャーキャピタルについていろいろリサーチして、結果「私たちにもできるかな」と思えるようになったんです。

不安もありましたが、日本経済の活性化にはスタートアップ企業の成長や、ESG戦略の実装が欠かせません。その実現を目指せるなら、最初は小規模でもいいから挑戦していこうと心を決めました。

飲み会、会食ゼロの資金調達

【村上】コロナ禍は、私たちのビジネスにはプラスに作用しましたね。日本の企業は、話をするなら足を運ばなきゃというところがほとんどですが、コロナ以降は「最初だけ対面でお話しして後はオンラインで」が普通になりました。

撮影=遠藤素子

少人数の小さなファンドなのに、出資企業や投資先との打ち合わせを数多くこなせたのはそのおかげです。そういえば、今回の資金集めでは飲み会も食事会もゼロだったんですよ。コロナ前はそんなことはあり得ませんでした。そしてコロナで社会が急変し、そこから生まれるビジネスチャンスをつかもうとするスタートアップも出てくるタイミングだったのです。

【キャシー】同感です。今回は企業の偉い方々もコロナ禍で在宅勤務になっていたので、普段よりずっとつかまえやすかったですね。そのおかげで商談もスムーズに進みました。