介護施設の中には、労働環境が著しく悪いところがある。現役介護職員の真山剛さんは「面接官から『ここは絶対にやめたほうがいい』と言われたことすらある。施設選びには注意が必要だ」という――。(第1回/全2回)

※本稿は、真山剛『非正規介護職員ヨボヨボ日記』(三五館シンシャ)の一部を再編集したものです。

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見学してから実際に応募した人は2割以下

介護職員養成スクールを卒業し、さっそく仕事を探した。鹿児島市の北東部に位置する吉野町地区には老人施設がたくさんある。

市内中心部から車で20分程度の高台にある場所だが、この一帯にはまだ畑地や田園が広がり、老人施設にはうってつけの環境である。その中から通勤圏内の施設数軒にアタリをつけ、ハローワークの相談員から連絡してもらった。

すると最初の求人先の担当者から、私と直接話がしたいと言われ、相談員から受話器を受け取った。

「応募、ありがとうございます。面接する前にひとまず施設の見学に来ていただけませんか? それから判断されたほうがいいと思いますよ。せっかく書いた履歴書が無駄になりかねないですからね」

声から、かなり年配と思われる相手の女性はきっぱりと言った。

「えっ? どういうことですか」
「じつは今まで見学した方で、それでも応募した人は2割にも満たなかったのです。うちは想像以上にすごいですよ。大丈夫ですか?」

その当時は、まだ介護施設や障碍者しょうがいしゃ施設の実態を私もよく理解していなかった。あとで聞いた話だが、その施設はかなり重度の利用者がいて、噛みつかれたり、便を投げつけられたり、自傷行為があったりが日常茶飯事の職場だったようだ。どうりで給与がほかよりもよかったわけだ。しばらく考えて私は保留にした。

ハローワークの相談員も困り顔で、「正直、あなたのやる気をそぐようであえて話しませんでしたが、あの施設は短期間の離職率も相当……ですね」と、彼は言葉を濁した。