交渉では「最後は必ず笑って別れよ」

交渉の際、肝に銘じておくべき事項があります。大きくは次の三つです。

一つ目は「最後は必ず笑って別れよ」です。協議中は互いの利益のために衝突することも、憤然として顔を赤くすることもあるでしょう。けれども最後には、必ず笑顔で握手して別れなければなりません。そうしてこそ、次の会談が約束できるのです。

経営上の交渉プロセスにおいて、衝突は必ず起こるものです。それぞれ求める所が異なるのですから、どうしても避けられないことです。だからといって相手をかたきのように考えて、もう二度と会うものかという態度を取るべきではありません。

今回の協議はうまく進まなかったけれど、次にお会いするときは最善を尽くして解決策を見つけましょうと言い、笑って別れなければなりません。これが交渉の第一のスキルです。

交渉の場で、重要なのは終わらせかたです。自分の望む方向に話が進んでいないときにこそ、より神経を使いましょう。最後まで自分の意見を強く主張するより、「あなたの言うことももっともです。私の考えにもやや無理があったかもしれません。時間を置いて、もう一度よく考えてみませんか。また話し合いましょう」といった対話で協議を終わらせます。

次があることを約束するのです。

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相手が話す時間は長ければ長いほど良い

二番目は、交渉を展開する方法に関するスキルです。20数年間経営現場で直接培った経験を例にして説明しましょう。

相手のポジションが自分よりはるかに良かったり悪かったりする場合には、話は意外に簡単にまとまります。駆け引きの余地が特にないからです。交渉においては、良いポジションを占めた人が有利なのは当然です。

では、両者の交渉ポジションが同等な場合はどうでしょうか。どちらも自分が有利な立場にあると考えているため、お互い譲歩しようとしません。交渉のテーブルには張り詰めた緊張感が漂います。さて、どうしますか?

相手よりも自分の方が「優越した論理」を持ってこそ、交渉を有利な方向へ導くことができます。互角に対峙たいじしているときに、私が使っていた交渉方法を紹介します。

まず私は、相手から先に意見を説明するよう誘導します。自分の立場をまず明かすのではなく、相手の意中を先に確かめるのです。

なぜ私と交渉しようとしているのか? なぜこんな条件を出すのか? そうしなければならない理由は何なのか? といったことを質問し、まず相手に説明の機会を与えます。このとき、相手が答える時間が長くなればなるほど好都合です。場合によってはもっと長く、もっと詳しく話させるよう導きます。我慢強く説明を傾聴します。