オランダもドイツも、コロナ禍での迅速な初動対応で与党が有権者から高評価を得た国だ。長期政権が国政を率いていたことでも共通する両国だが、行動制限の長期化などで人々の不満が溜まるにつれ、民意は離れているようだ。与党が思うような勝利を収めない両国の様子は、コロナ禍の長期化で混とんとなる欧州政治を良く描き出している。

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総選挙前のコロナ政局……無責任な甘言に要注意

ワクチン接種が進むまでは行動制限で時間を稼ぐというのが、昨秋以来の欧州のコロナ対応戦略であった。しかしながらワクチン接種は思うように進まず、また毒性が強い変異株が出現・流行するなど、各国政府は手をこまねいている。有効な手立てが限られる中で、行動制限という「劇薬」を飲み続けているというのが、欧州の実情だろう。

感染の流行が収まるまでは、行動制限で医療需要を抑えつつ、ワクチンの接種や医療体制の拡充を着実に図ることしか具体的な対応策がない。それがこの1年で我々が得た教訓だ。そのためには政治による一貫した取り組みが必要となるが、欧州各国では、与野党の立場を問わずに政局を仕掛けようとする機運が高まっている。

本来なら挙国一致で臨むべき国難に見舞われているにもかかわらず、政治が「コロナ政争」に耽るようでは、コロナ対応はますます遅れてしまう。ここで求められるのは、有権者による冷静な判断だ。政局の中で論じられる無責任な甘言に引き寄せられてしまえば、即時性が求められるコロナ対応がさらに遅れてしまうことになりかねない。

当然ながら、コロナ対応の遅れは景気の回復も遅れにつながる。現在、世界の景気は製造業を中心に戻り歩調であるが、一方で雇用吸収力の高いサービス業は死に体同然の状況が各国で続いている。一連の状況は、今年の然るべき時期に解散総選挙を控える日本にも共通しているということを、我々は肝に銘じておきたいところだ。

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