EBMでもNBMでもなく、WBMの時代へ

新型コロナウイルスは「新型」とあるように、人類が初めて出合った未知のウイルスでした。今は「エビデンス・ベースド・メディスン(EBM)」といって、エビデンス(科学的根拠)にもとづく医療が大事だといわれますが、初めて経験することにエビデンスなんてありません。さらに、「ナラティブ・ベースド・メディスン(NBM)」といって、患者さんのナラティブ(物語)を大事にすべきだ、ともいわれます。

EBMもNBMもたしかに大事です。

でも、私は、今必要なのは「WBM」だ、と思っています。

「WBMってなんやねん!」というツッコミが聞こえてきそうですが、「ウォーキング・ベースド・メディスン」です。つまり、歩くこと。

お金持ちになることよりも幸せになることが大事、お金よりも心の豊かさが大事――。そんなふうに世の中の価値観が変わってきています。今回の新型コロナ騒動は、そうした世の中の変化をさらに後押しするものとなりました。

医療のあり方もこれから変わっていくでしょう。

人生100年時代なんていわれて長生きする人が増えているなか、健康で長生きしようと思ったらセルフケアが欠かせません。セルフケアとは何かといえば、基本になるのが歩くことです。「そう思い5冊もの歩行本」を書きましたが、本書は6冊目になります。

歩くことは自然免疫を鍛える一番の方法

また、新型コロナのような新たな感染症は、今後も確実に出てきます。そのときに頼りになるのは自分自身の免疫力、もっといえば「自然免疫の力」です。

本書の中で詳しく紹介するように、歩くことは自然免疫を鍛える一番の方法です。そして、歩くことは、体の健康だけでなく、心も豊かにしてくれます。

長尾和宏『コロナ禍の9割は情報災害 withコロナを生き抜く36の知恵』(山と渓谷社)

さらにいえば、コロナ禍で収入が減った人も少なくないと思いますが(私のクリニックも、一時は患者さんが半分になりました)、歩くのにお金はかかりません。一切お金のかからない確実な健康法なのです。

ウォーキング・ベースド・メディスンという言葉を使っているのは私だけだと思いますが、「歩くことが大事」という考えは世界的な潮流で、歩行と健康の関係について研究する研究者は増えています。そして、この数年の間に論文もたくさん出ています。

歩くことがベースになければ、食事療法も薬物療法も成り立たない。私はそう思っています。

これからはWBMの時代です。自分で歩いて自然免疫を鍛え、新型コロナはもちろんのこと、これからも出てくる新たな感染症をはじめとしたさまざまな病気に負けない体をつくりましょう!

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