首都圏の20の私大のうち16校の志願者数が昨年より減った

では、2021年度、つまり今春の首都圏大学入試状況はどうだっただろうか。いわば中学受験にとっての「外的環境」だが、これが驚くほどに大きく変化した。端的に言うと首都圏の私立大学の受験者数が激減し、その入試難度が緩やかになっている大学が目立つのだ。

この原因は何か。もちろん、少子化による高校卒業生数が約2.6%減少していることも関係しているだろうが、それ以上に大きいのは「コロナ」である。大学受験生に以下の傾向が見られたという。

1)従来であれば地方から首都圏大学を受験する層が激減した。緊急事態宣言の発出されている首都圏まで足を運ぶのをためらった結果といえるだろう。
2)上と関連するが、対面授業が果たして成立するか否かが見えない首都圏の私立大学を避ける傾向にあった。

論より証拠である。図表2は今春の首都圏の主要私立大学の昨年比の志願者総数の推移をまとめたものだ。青字で示しているのが昨年比で志願者を減らした大学だが、20大学のうち16大学でこれに相当する。

大学受験予備校で教鞭を執る講師たちに今春の大学入試状況をヒアリングしたが、早慶などの一部難関大学の難度が緩やかになったとは言い切れないものの、特にMARCHを中心とした上位大学は倍率低下とともに、その難度が緩やかになったところが多いとのこと。

2022年度の中学入試はどうなるのか?

繰り返すが、中学受験者動向は大学入試状況に大きな影響を受けるものだ。

そう考えると、保護者が今春の首都圏の早慶MARCHの大学入試で志願者数が減ったことで難易度が若干低くなったと捉え、無理して付属校にわが子を入れなくてもいいと考える層が出てきてもおかしくない。そのため、2022年度の中学入試は、近年、過熱気味だった「大学付属校人気」がいったん落ち着き、場合よっては「付属校離れ」が起きる可能性もある、とわたしは見ている。

もちろん今後、コロナが収束に向かい、大学の授業も対面式に戻れば、早慶MARCHを受験する高校生も再び増える可能性もなくはない。そうなれば、付属校人気は続くかもしれない。

いずれにしろ、中学受験生の保護者は、そのときどきの「時勢」に翻弄されずに、腰を据えてわが子の志望校を選定することが大切だ。「進学校だから」「付属校だから」という表面的な尺度で学校選びをするのでなく、その学校の持つ独自の文化や教育内容をしっかりと吟味し、わが子の成長を後押ししてくれるだろうと確信できる学校を数多く見つけてほしい。

中学受験の世界に長く身を置くわたしの願いはそういうことだ。

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