僕たちはやればできると勝手に思ってやってきたのが、まあスケールは違いますけど、喜一郎さんも最初は同じだったんだなと思ったら、勇気をもらいました。僕らは大手ビールメーカーをこえようとはまったく思ってないですけど、でも、喜一郎さんを真似すれば、何十年後とかにはやっぱりできるかもしれない(笑)。
やっぱり大言壮語は必要だな、と
あとすごいなと思ったのは、アメリカに初めてクラウンを持って行ったけれど、アメリカの市場をわかってなくてこてんぱんにやられてしまう。でも、まずは唾をつけておくんだ、と。アメリカ進出とはどんなことかがわかることが重要なんだ、と。
その大言壮語がいいですよね。うちの会社では僕が一番ほらを吹くとされています。大きいことを言うし、まあみんなもちょっとついていけないところがあるらしい(笑)。それでも、昔に比べると、スタッフがきょとんとすることは減ってはきているのですが、やっぱり大言壮語は必要だな、と。信念を持ち続けていくことですからね。
あきらめずにやり続けていたら失敗じゃなくて、成功になるんだ。そういう気持ちは持っていた方がいいですね。僕は経営者なんで、僕が諦めちゃうと、経営は終わってしまう。僕が諦めずに、行けると思ったときにはとことん行っちゃうのが大事なんですね。
トヨタは今よりずっと厳しい時代に、とてつもない挑戦をしているのだから、僕らも、もっともっと挑戦しなければと思いました。
お金がないから、考えるしかない
豊田喜一郎さんはゼロからの挑戦でした。僕たちもクラフトビールメーカーとしては、本当になんの知識もなかった。ビールを造る機械も日本には大手メーカー向けしかなかったので、海外で調達したのですが、すべて揃った「ビール製造セット一式」を買う資金がなくて、部品ごとに買い集めてバラバラに持ってきて組み合わせて。
寄せ集めだから、しょっちゅうラインは止まるし、故障もする。部品がなくなったら海外製でしょう。取り寄せるのに1カ月も2カ月もかかる……。ほんとに悲惨な感じからスタートしたので、喜一郎さんの苦労話が身にしみました。
ビールの売り方だって、まったくわからなかった。豊富な資金があれば、ド派手な宣伝なんて手もあるのでしょうが、なにしろお金がないから、考えるしかない。ビールを造ること、売ること、すべてにおいて素人でした。素人だったから、考えて仕事せざるを得なかったという感じですかね。考えて、自分たちの手元にあるものでなんとかして、くふうしてやってきました。