この話を知って、一気に視界がひらけました。

できないことは無理に克服しなくていい。社会のほうを変えればいい。

自分の仕事に活路を見出した気がしました。障害当事者を含めた、いわゆる「マイノリティ」の方が持つ課題や価値に、もしかしたら自分の「広告的なやり方」で光を当てられるかもしれない、と。

大会ポスターに刻んだコピーは…

その矢先に、日本ブラインドサッカー協会(アイマスクを装着して行う「視覚障害者サッカー」)の松崎英吾さんとの出会いがありました。プロボノ(ボランティア)として、広報やマーケティングを手伝ってもらえないか、と依頼されたのです。2014年。ちょうどその年の11月に、4年に一度のブラインドサッカー世界選手権、初の日本開催が決まっていたからです。

ブラインドサッカー世界選手権日本大会のポスター(提供=日本ブラインドサッカー協会)

そして、僕はひとつのコピーを書きました。

「見えない。そんだけ。」

いつも広告を考えるときのように、普段どおりの構えで提案したコピーでした。なのに、反応がいつもとまったく違った。

「このコピーやばい!」「超カッコいい!」……なんだかもう、こっちが照れてしまうくらいの褒められようです。これまでいくつも広告コピーを考えてきましたが、これほど感謝されたことはありませんでした。

コピーの入ったポスターが公開されると、著名な方たちにもどんどんシェアされました。世界選手権は見事、開幕戦が完売。パラスポーツとしては異例の動員となりました。

これは、日本ブラインドサッカー協会が長年積み上げてきた実績が効いた結果です。でも、僕のコピーも、ほんのちょっとその一助にはなった。

松崎さんはこの成果について、ウェブメディアでこう答えていました。

「開幕戦のチケットが完売したのは2~3日前とギリギリ。お客さんが全然入らない悪夢にうなされたり、集客のプレッシャーに随分苦しめられました。けれども、障害者スポーツでも、有料でも、これだけ人が集まるんだということを証明したかった。これほど多くの人たちが訪れる場と雰囲気を実現できたことは、僕たちにとっても、とても大きな成果だったと感じています」

なにより、この仕事を通じて、松崎さんに喜んでもらえたのが本当にうれしかったんです。