自分の頭で考えられる人材は1割程度

【白河】上意下達ではないコミュニケーションがあることをそもそも知らないわけですね。でもパワハラ系の上司だと、周囲の人が「こんなやり方もありますよ」と意見できないから、それこそイノベーションなんて生まれなくなる。

白河桃子『働かないおじさんが御社をダメにする』(PHP新書)

【中田】その研修をお願いした講師の方から、「上司が一方的な指示ばかりのコミュニケーションをしていると、指示待ち人間を量産することになる」と指摘されて、なるほどなと思いました。日本の組織を構成するのは、言われたことを指示通りにやる真面目な人が大半で、他人から何を言われても自分の頭で考えて自己実現できるのはほんの1割程度しかいないそうです。だからミドル世代の管理職がコミュニケーションを変えないと、部下たちも自分の頭で考えない指示待ち人間ばかりになってしまう。

【根本】それでは下の世代も成長しないですよね。

【伊藤】実はパワハラの被害者になるのは、指示待ちタイプの人間が多いんです。上司に言われたことを真面目に聞くので、上司も強く言いすぎてしまうんでしょうね。

家に居場所がないおじさんに在宅勤務は難しい

【白河】ワークスタイルの変化に対しては、いかがですか。最近は在宅勤務やリモートワークなどの新たな仕組みを導入する企業が増えていますが、おじさんたちは活用できているんでしょうか。

【根本】私の会社は在宅勤務を取り入れていますが、中高年の男性はなかなかやりませんね。おそらく家にいると奥さんに邪魔者扱いされるといった理由だと思いますが、もったいないと思います。うまく活用すれば生産性を上げられるのに。

【白河】リモートは食わず嫌いが多いんです。おじさんに在宅勤務を強制するのは難しいですね。だから自宅以外のコワーキングスペースを会社が用意することも必要です。例えば味の素などはシェアオフィスをいくつも借りて推奨しています。

【伊藤】私が今一緒に仕事をしているのもおじさんですが、最初のうちはやはり「家には奥さんがいるから在宅はちょっと」と敬遠していたんです。でも奥さんが体調を崩したときに、お子さんもまだ小さいから面倒をみる人間が必要だからと、初めて家で仕事をすることになって。それで実際にやってみたら「すごく効率が良かった」と言っていました。だから一度体験してみれば、おじさんもメリットがわかるし、新しい仕組みを使うようになると思うんです。