どんな人間にも自分を活かす場所はある
このことは、どんな人間にも自分を活かす場所があるという意味にもなる。言い換えれば、誰しも自分の武器、セールスポイントをもっているということだ。
そもそも4番打者がひとりでできることなどたかがしれている。どんな天才バッターであっても、ひとりではホームランの1点しかとれない。前のバッターが塁に出てはじめて、ホームランが2点にも3点にも4点にもなる。後続バッターが続くからこそ、4番打者が打ったヒットが生きる。
すなわち、脇役がしっかり自分の役割を果たしてこそ、主役である4番打者はより力を発揮できるし、主役が主役としての責任を果たしてこそ、脇役はやりがいや手応えを感じることができるのだ。
主役と脇役、どちらが上ということではない。どちらが欠けてもチームは成り立たない。これは、野球のチームにかぎった話ではない。すべての組織にあてはまるはずである。映画だって、役者だけではできない。撮影、照明、録音、大道具といった、さまざまな専門職が必要だ。そして、それぞれ求められる才能は異なるのである。
おのれを知れば、戦い方がわかる
ならば、誰もが4番打者、主役を目指す必要はない。100メートルを走るのに20秒かかる人間は、100メートルで勝負する必要はないし、42.195キロを2時間ちょっとで走れないなら、別の競技で戦えばいい。
大切なのは、自分の武器を最大限に発揮できる場所を見つけることだ。
それでは、どうすれば、自分を活かす場所が見つかるのだろうか──。
おのれを知ることだ。すなわち、自分の武器とはなんなのか、自分にはなにができるのか。まずはそれをしっかりと見極めることである。
そして、それがわかったら、その武器をより研ぎ澄ますとともに、武器を最大限に活かすにはどうすればいいのか、なにが必要なのか考えることである。自分を活かせる場所、力を最大限に発揮できる場所とは、そういう過程のなかから見えてくるものなのだ。