更年期の症状で夫婦仲がぎくしゃく

高本さんがwakarimiの着想を得たのは2年前。43歳のときだ。

「すごく疲れやすくて、肩こりがひどい、頭痛がする……と、日に日に体調が悪くなり、仕事や育児は何とかこなしても、家事まで手がまわらなくなってきたんです。夫に『しんどい』と言ってもなかなか理解してもらえず、サボっているようにしか見られない。ケンカが増えて、夫婦のコミュニケーションは最悪の状態になりました」

オンラインでインタビューに答える高本さん

そんな中、たまたま医療関係の仕事をしている友人から、「更年期障害ではないか」と指摘された。

「更年期障害というのは50代くらいで始まると思い込んでいたので、私も驚いたのですが、調べてみたら、まさに更年期障害の症状そのもの。更年期は閉経の時期をはさんだ前後10年間くらいを指すので、40代で症状が出はじめることが多いんですね」

不調は女性ホルモンの変化によるものだとわかったが、高本さんは、それを夫にも理解してほしいと考えた。

「でも、私からすれば『これだけ体調が悪いんだから、見たらわかるだろう』と思うけれど、彼からすると『説明してくれないとわからないし、どうしてほしいかは言ってもらわないとわからない』。どちらが悪いというわけではなく、伝え方を変えないといけなかったんです」

お互いの認識のズレをどう埋めるか。コミュニケーションの見直しがスタートした。

実体験から得たアイデアをビジネスに

「今、自分がどういう体調なのかを説明し、彼に何をしてほしいかを言葉にして伝えるということを実践し始めました。同時に、いろいろな論文を読んだり、夫婦カウンセラーの資格をとったりと、女性の体のことや夫婦間のコミュニケーションについても学びました。そうしていくうちに、体調をコントロールできるようになり、パートナーとの関係も改善。生活も楽になってきました」

周りの友人たちに聞いてみると、同じように、更年期による不調や、そこから生まれるパートナーとのコミュニケーションのすれ違いに悩んでいる人が多かった。そして「自分の体験を体系立てて、システムに落とし込めば、ビジネスになるんじゃないか」と思い至った。実体験がwakarimiにつながった。

wakarimiのシステムには、自身の体験から得たアイデアをふんだんに盛り込んだ。

「まず、更年期の知識をパートナーと共有すること。そして、女性の体調を日々、パートナーに伝える仕組みを考えました。でも、ただ伝えるだけでは不十分です。『女性がこうだから、男性はこんな風な行動をするといい』『こんな声かけをするといい』と、できるだけ、どんなアクションをすべきか具体的にわかるようにしています。相手に感謝を伝えることも重要です。『今、パートナーに感謝していることは何ですか』『どれぐらいありがとうと言えていますか』、そういった問いかけをして、その答えを相手に伝えるようなワークも入れました」

β版は2020年4月に完成。7月には本格稼働を迎えた。ビジネス化を思いついてからわずか半年という早いスピードで起業が実現した。