メインカルチャーの勢いがサブカルチャーを活性化させる
【宗田】僕は、その部分については別の意見を持っています。サブカルチャーというのは、メインカルチャーがあるからこそ育つものだからです。
京都には、京都精華大学というサブカルに強い大学がありますが、あれは京都大学に人文科学研究所があったからですよ。そこに梅棹忠夫さんを筆頭にすごい人たちが集まって、一つの文化を築いた。その反動のようなかたちで京都精華大学のような存在が出てきたということ。
1997年にはCOP3(気候変動枠組条約締約国会議)が京都で行われました。あのときにも京都には環境活動家だらけになった。国際文化に触れたい学生が全国から集まってCOP3のお手伝いをして、彼らは現在、日本中で環境運動を支える存在になっています。
【村山】いずれにしても、観光を再生させるためには、「人」が重要になるということですね。でも、このコロナ禍において手を打たないと、せっかく観光に目を向けてくれていたクリエイティブな力を持つ若者が、観光から離れていってしまうかもしれない。
【宗田】もちろん、メインが元気だからサブが育つとはいえ、学生を筆頭に、若い人たち、旅行好きな人たちをどう再生するか、あるいは彼らのクリエイティビティをどう引き出すかという視点は必要なものです。
観光は手段であって目的ではない
【村山】拝読させていただいたお二人の本、そして私の本も含めて、共通しているのは「観光やインバウンドは、あくまで手段であって目的ではない」というところだと感じました。
つまり、そもそも何を再生させたいのかというところに立ち返らないと、何をしたらいいか見失ってしまいかねません。
現状は、産業としての観光を再生させようとしているふうに見えてしまうのですが、これではアフターコロナで国際観光が正常化していったときに、日本は大丈夫かと、少し心配になってしまいます。
【中井】たとえばGo Toトラベルも、緊急事態でしたので仕方ないところはあるんですが、カンフル剤的にバーンと大雑把にお金を入れるのではなくて、もう少し区分けしていく必要があるということだと思います。
観光産業全体のなかで、どこが欠けてしまうと文化的な損失になるのかという視点をもたないといけない。
【宗田】それは、私も含めて、政策立案者側が考えないといけないところでもあって。やっぱり、クリエイティブなところはできるだけ生き残れるようにしたいし、単純に金勘定だけでやっているようなところは市場原理に任せておく。
そういうバランスを取っていかないといけないということですし、実際にやっています。もっといえば、私の専門であるイタリアを含め、観光先進国はみんなやっていることで、その動きは日本の観光地でも進んでいくでしょうね。
【村山】まだまだ話し足りませんが、そろそろ時間が来たようなので。アフターコロナを占ううえで、重要な3つの本だと思いますので、興味をもってくださった方はぜひ読んでみてください。本日はどうもありがとございました。
【宗田・中井】ありがとうございました。