「退職金投資デビュー」はリスクが大きすぎる

特に年金2000万円問題によって、焦って「何とかしなきゃ」と考える人はさらに増えたと思います。事実、知り合いの証券会社の人たちに聞くと、昨年後半は新規に口座を開設して取引を始めた人は非常に増えたと言います。

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もちろん、将来に備えて自助努力の必要性を感じ、自分自身の判断で投資を始めるということは決して悪いことではありません。しかしながら、若い人であればともかく、それまで投資の経験の無かった人が定年を迎えて、「年金が不安だから」という理由だけで深く考えずに投資を始めるのはあまり感心しません。

特に、もらった退職金を投資につぎ込む、いわゆる「退職金投資デビュー」だけは、絶対にやってはいけません。なぜならあまりにもリスクが大きいからです。

実は「退職金を余裕資金だ」と勘違いしている人は少なからずいます。サラリーマンにとっては、毎月決まった給料日にお金が振り込まれ、それが生活資金になっています。

そんなところに生涯で唯一のまとまったお金を受け取る機会である退職金が振り込まれたら、それは余裕資金であると勘違いしてしまうのは無理もないことでしょう。

でも本当はそれは余裕資金などではなく、老後の生活をまかなうための大切な資金なのです。なぜなら、定年後はそれまで毎月振り込まれていた給料は無くなるからです。

未経験者の9割は投資に失敗する

投資の経験も知識も、そしてリスクを取る覚悟もない人が「これは余裕資金だ」と勘違いして投資につぎ込むのはあまりにも危険過ぎます。もし失敗して退職金が半分などになってしまったらこれは本当に大変です。

2012年以降は基本的には株価も順調に推移してきたので、そんな心配は無用と考える人も多かったでしょうが、2020年に入ってからのコロナショックの時には、退職金で株式にまとまった資金を投資した人は、かなり肝を冷やしたのではないでしょうか。

私は投資の経験のない人が株式投資を始めた場合、おそらく9割以上の確率で失敗すると思っています。その理由は二つあります。

①投資を甘く見ている

長年サラリーマンとして真面目に働いてきた人の中には、「株なんて博打ばくちだ」とか「株の儲けは不労所得だ」と考えている人がいます。それは決して正しくないのですが、そういう人がずっとそう思い続けて株式投資をしないというのであれば、それはそれでよいのです。

問題は、退職金というまとまったお金を手にして少し欲を出して投資を始めようとする人です。そんな人は投資を安易に考えがちなのです。

しかし投資というものは、何も勉強しないままでうまくいくほど甘いものではありません。最初はビギナーズラックで儲かったとしても、いずれどこかで必ず行き詰まり、大きな損をする可能性は高いと思います。