「人を助ける、人の役に立ちそうな仕事という気がした」

アルバイト時代は、社員の指示通りに動くだけでよかったが、今は指示を出す側。さらに社員には現場作業だけでなく、「見積もり」という重要な仕事がある。現場の廃棄量を見きわめて、必要なトラックの台数と大きさ、作業時間、それに伴う金額を依頼者に掲示する業務だ。基本的に同社では追加料金をとらない。そのため見積もりを大きく外して作業日が延長になれば、会社に負担をかけ、依頼者にも迷惑をかける。

同社の仕事は、本来はゴミ屋敷清掃ではなく、「整理業」であるため、大量のゴミから“価値ある物”を見つけ出す目利きも必要になる。

「まだまだ勉強中の身なんですよ。石見さんにはよく嘆かれますね。けど、作業が終わって依頼人の方から『ありがとう』と感謝されると、また頑張ろうって思える」

積み込み作業をする勤務10年目の社員・大島英充さん(撮影=笹井恵里子)

それは今年で同社勤務10年目という社員の大島英充さんも同じ気持ちだ。大島さんはこの仕事に就くまでは、引っ越し業や電話会社の営業など、さまざまな仕事を渡り歩いてきた。

「電話会社の営業をしていた時は、とにかく契約してもらうことが第一みたいなところがあったので、正直『これは誰も幸せにならない仕事』と感じました。そんな時、求人広告でこの仕事を見かけて、興味を惹かれて応募したんです。面接では『人が亡くなった現場はすごいけど大丈夫?』と言われました。同時期にお酒の配送とか他の仕事にも応募していたのですが、遺品整理業が最も人を助ける、人の役に立ちそうな仕事という気がしたんですよね」

「いずれは子供たちにも自分の仕事を理解してもらえたら」

10年前、大島さんは29歳で同社に入社した。入社して数年がたつと、徐々に孤独死の現場にも踏み込んでいくようになったという。

「死後3カ月の現場を初めて見た時は、やっぱり衝撃的でした。でも、僕は作業後もご飯をしっかり食えました。たしかにキツイ面もあるけど、これで喜んでくれる人がいるならいいんじゃないかなって思えました」

大島さんには妻と、2人の子供がいる。先日、自分の仕事について上の子に「お父さんは死んだ人が残した物や、家の中で亡くなって血がついた物を片付ける仕事をしている」と話したそうだ。

「子供は『えっ……』と絶句していましたね。まだイメージできなかったんでしょう。僕は職種に上も下もないと思っていて、“世の中に必要だからある仕事”をしていると捉えています。そしてそういう仕事で自分たちが生活がしていることを、いずれは子供たちに理解してもらえたら」