薄くてライトな書籍の次に来るものは

数年前、百数十ページほどのポケット判で、文字数が極めて少なく、1時間もあれば読み切れる書籍が軒並みベストセラーとなったことがあった。これから先の出版の世界に不安を募らせていた私は、ある日、編集長にその悩みを打ち明けたことがあった。

「これから先、本はますます薄くなり、文字数もいまよりもっともっと少なくなっていくのでしょうか。その傾向はどんどん拍車がかかっていくのでしょうか」

編集長の答えは明瞭だった。

「それは違う。時代は拮抗する。読みやすいもの、とっつきやすいものは確かに飛びつきやすいが、人間はあるところまでいくと、一方で難解なもの、ずしりと手応えのあるものを欲するようになる。人間社会はそうやって今日まで発展してきた」

いま店頭に置かれている書籍のラインナップを見て、あぁ、確かにそのとおりだったと腑に落ちるものがある。

コロナ禍を「学び」の転機に

コロナ禍を体験し、いまこそ人々は本物の学びを得ようとしていることを肌で感じる。

藤尾秀昭・監修『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社)

人が真に学ぼうとする時、向かうのは書籍ではないのか。歴史を通して活字に親しんできた我々のDNAにはそんな遺伝子が組み込まれているように思えてならない。

本書の1月1日には、日本を代表する経営者・稲盛和夫氏の記事が収録されている。タイトルは「知恵の蔵をひらく」

あらゆる書籍には、まさに一人ひとりに秘められた知恵の蔵をひらくような話がちりばめられている。

年末年始は、書店でそんな1冊との素敵な出会いがあることを、作り手の一人として願わずにはいられない。

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