「一国二制度」を形骸化させるものであり、断じて容認できない
朝日社説は「中国は香港に『高度の自治』を保障する、というのが対外的な約束だ。ところが今回、立法会の議員資格を奪うことができる条件を大きく広げた」と指摘し、こう主張する。
「反政府的な言動を取り締まる国家安全維持法に続き、『一国二制度』を形骸化させるものであり、断じて容認できない」
なるほど、その通りだ。
朝日社説は「今回の(全国人民代表大会の常務委員会の)『決定』には、議員の資格失効の条件として、香港に『忠誠』を尽くすという要求に従わない▽国家の安全に危害を与える――などが並ぶ。あいまいで恣意的な判断が可能となる内容が多い」と解説したうえで、こう指摘する。
「これでは政府への抗議や異議表明など、民主派が行ってきた多くの活動が失効の根拠にされる恐れがある。議会の運営自体も変わるだろう」
「民主派議員の多くは市民の直接投票による選挙で選ばれている。その政治的な言動を理由に資格を一方的に奪うのは、思想弾圧であり、民主主義を真っ向から否定する行為である」
香港の問題を「対岸の火事」としてはならない
このままでは香港の自治と民主主義を保障する「一国二制度」が崩れていく。国際社会が重ねて強い声明を出し、さらなる国際世論を形成していくべきだ。
香港が自由を失えば、香港が築き上げてきた自由な金融市場なども姿を消す。世界各国の資本が次々と香港から流出する。すでにそうした傾向は表れている。
中国にとっても経済的なダメージは大きいはずだ。その辺りを習近平(シー・チンピン)政権はどう考えているのだろうか。
朝日社説は最後にこう主張する。
「日本政府や欧米諸国からは、懸念の表明が相次いでいる。共産党政権は強硬姿勢を崩していないが、国際的な世論の圧力を強める必要がある」
「対外公約や『法の支配』を無視するような中国の姿勢を座視すれば、その影響は周辺地域と世界に及ぶ。日本を含む各国とも、香港の現状を自らの問題ととらえねばなるまい」
この朝日社説の主張に賛成する。香港の問題を「対岸の火事」としてはならない。