津賀社長が描いた成長戦略は誤算に終わったが…
津賀社長は、価格競争に陥りがちな家電に代表される消費者向け(BtoC)ビジネスから自動車や電子部品といった企業向け(BtoB)ビジネスへのシフトを打ち出す成長戦略を描いてきた。
しかし、成長領域に位置付けた自動車関連ビジネスは2020年3月期の営業損益が466億円の赤字に陥り、米電気自動車(EV)大手テスラと共同運営で取り組んできたEV向け電池工場は収益面で寄与するところまでには至っておらず、津賀社長が描いた成長戦略は誤算に終わった。
それは歴代トップが課題と位置付けながら解決できなかった、多岐にわたる事業領域を抱える巨大組織をいかに効率的に運営し、成長力を引き出すかという経営課題に最適解を見いだせなかったことに尽きる。
なぜ株式時価総額でソニーに大逆転されたのか
ライバルのソニーは一時期の苦境から抜け出している。事業のポートフォリオ転換が実って好業績を続け、パナソニックとの差は鮮明だ。パナソニックの経営方針説明会直後の株式時価総額は約2兆6000億円だったのに対し、ソニーは11兆4000億円とその差は大きく開いた。
2008年末の時価総額はパナソニックが2兆7000億円、ソニーは1兆9000億円とパナソニックが大きく引き離していたことを考えれば、低成長をなかなか抜け出せないパナソニックに対し、株式市場、投資家が厳しい評価を突き付けていることがうかがえる。
海外の複合企業(コングロマリット)でもかつてエクセレントカンパニーの頂点に立った米ゼネラル・エレクトリック(GE)は2018年に、110年以上維持してきたダウ工業株30種平均株価の構成銘柄から除外された。
GEは急速な事業環境変化に事業構造変革が遅れ、赤字事業の切り売りを迫られた。
その結果、複合企業が多岐にわたる事業の相乗効果を引き出せず投資評価を下げる「コングロマリット・ディスカウント」の直撃を受けた末の屈辱だった。
パナソニックもその例に違わず、長期政権となった「津賀体制」も、その罠にはまったのである。