350億円程度の剰余金があり、10件程度の合併支援が可能
「地銀の合併にはシステム統合費用などに100億円規模のコストがかかることから、合併を躊躇する要因の一つになっている。この阻害要因を国が肩代わりすることで、再編を促すことが狙いだ。金融庁の金融審議会で議論し、来年の通常国会に同制度を盛り込んだ金融機能強化法の改正案を提出する」(自民党幹部)という。
補助金の財源は預金保険機構の利益剰余金を充てる方針で、「税金投入というわけではない」(先の自民党幹部)とされる。預金保険機構には現在350億円程度の剰余金があり、10件程度の合併支援が可能と見られている。
金融機関の破綻がなくなったことで、預金保険機構の剰余金は増えているが、原資は全預金取り扱い金融機関が拠出する預金保険料だ。それが特定の金融機関の合併補助金に使われることに異論が出る可能性もある。
日銀、政府を挙げて地域金融機関の再編を手助けする裏には、「地方経済の安定には地元金融機関の強化が不可欠」との思いがある。菅政権にとって「地方」は特別の意味を持つようだ。
「組む相手も銀行同士ではないかもしれない」
まさに当事者である全国地方銀行協会の大矢恭好会長(横浜銀行頭取)は9月16日の記者会見で次のように述べていた。
「貸出に関して言えば、銀行の主たる収益源の一つであるわけです。コロナ禍で情勢は変わったと思いますが、企業サイドも資金余剰になってきており、あまり日本の中での資金需要が見込めなくなってきているというのが、ここ何十年かの趨勢ではないかと思う」
「横浜銀行の場合は7割くらいが資金利益で稼いでいて、フィービジネスの割合はまだまだ低い。マーケット金利がどんどん低下し、ストックの貸出利回りも高いものからどんどん入れ替わっていく。資金利益が減っていく状況からはどの銀行も脱し、ようやく横ばいになりつつあります」
最悪期は脱しつつあるが、依然として地銀の収益の根幹は伝統的な預貸業務に依存している構図は変わらず、このままのビジネスモデルで経営を持続することは容易ではないということだろう。その処方箋として「再編ということが、その解決策ということももちろんあろうかと思うが、再編だけがソリューションの手段ではないとも思っている。組む相手も銀行同士ではないかもしれない」(大矢会長)とも述べている。
地方銀行の経営陣は、いよいよ正念場を迎えている。