眠れば眠るほど、記憶力が向上する

何かを覚える日の「前日」の睡眠時間と記憶力の関係について、カリフォルニア大学で研究が行われた。

多くの学生を集め、学習日の前日に「十分な睡眠をとるグループ」と「徹夜をするグループ」に分け、翌日の正午に新しい情報を学習してもらう。その後、2日間しっかり睡眠をとってもらった後でテストをすると、徹夜したグループは成績が40%も悪いという結果が出た。学習日の前日に徹夜をすると、翌日に脳の海馬が活動せず、記憶を残せなくなるのだ。

また、米国ハーバード大学では、何かを覚えた日の「当日」の睡眠時間と記憶力の関係についての研究が行われている。

133人の学生を「学習日に十分な睡眠をとるグループ」と、「学習日に徹夜をするグループ」に分け、さまざまな画像を見せて記憶してもらった。

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さらに、睡眠をとったグループを3つに分け、それぞれ十分な睡眠をとりながら、①記憶した翌日にテスト、②記憶した2日後にテスト、③記憶した3日後にテストを行った結果、日を追うごとに記憶が強化され、③の3日後のグループの成績がいちばんよいという結果が出た。

何か学習した日には十分な睡眠をとり、さらに寝れば寝るほど記憶力は向上する。逆に、学習日に徹夜をしたグループは、その後2日間十分な睡眠をとったにもかかわらず、③と同じ日数が経過した3日目のテストで記憶の強化は認められなかった。つまり、新たに学習した日に十分に眠らないと、記憶を刻みつけるチャンスを失い、二度と取り戻すことができないのだ。

これらふたつの研究からわかるのは、何かを学習する場合、前日と当日の両方で十分な睡眠をとれば、記憶力の向上が可能だということである。

アスリートにとっても8時間睡眠の効果は絶大

アスリートにとって睡眠は決定的に重要である。トレーニングや試合後に十分な睡眠をとれば、運動による体内の炎症を鎮め、傷んだ筋肉や組織を修復させ、細胞のエネルギーを回復させることができる。

そのため、トレーニングが激しいほど睡眠も多くとる必要があり、国際オリンピック委員会も2015年に睡眠の重要性を訴えるレポートを発表している。

750以上もの科学的研究によると、6時間睡眠を8時間に変えるだけで、疲労を感じるまでの時間が10〜30%延びる、垂直跳びの高さが向上する、心肺機能が向上する、筋力のピーク値が上がる、血中酸素飽和度が上がる、怪我のリスクが半分以下に下がるなど、アスリートにとってさまざまなメリットがあることがわかってきた。

北米のプロバスケットボールリーグNBA選手のアンドレ・イグダーラ(2015 NBAファイナルMVP)は、睡眠時間を8時間に改善しただけで、1分当たりの得点が29%増加し、フリースローの成功率が9%向上、スリーポイントシュートの成功率は2%上昇し、逆にファウルの数は45%も低下したのだ。まさに、睡眠は合法かつ究極のパフォーマンス向上薬と言ってよいだろう。