今年10月27日に同社が「正社員200人規模の希望退職を募集」と発表したのも、この流れにある。OBを含めて従業員を大切にする会社が、雇用に手をつけたという事実。まだまだ「創業以来、最大の危機」(同社社員)が続くのだ。
実は「ロイヤルデリ」と、それを提供する店「ギャザリング テーブル パントリー」は、調理業務や接客業務の軽減を図る“働き方改革”と、生産性向上の両立の意味合いから手がけられた事業だった。それがコロナ禍で一変した。
「次世代の主力」として地道に育成する予定だったが、コロナ禍の在宅勤務や非接触の視点で脚光を浴び、ロイヤルHDの期待の星としてクローズアップされるようになった。だからこそ、同社は育成を急ぐのだ。
家では作れない味と、ブランドがもつ安心感
ウィズコロナの現在、従来は当たり前だった「外出」や「外食」が特別な意味を持つようになった。そうなると飲食店の役割も変わっていく。レストランも居酒屋もカフェも、弁当やパンメニューなどテイクアウトに注力するのも、役割の変化のひとつだ。
お客が「レストラン」に求めるものは何か。少し引いた視点から考えてみたい。
筆者はかつて、大手食品企業の役員に「外食に求められる価値とは何でしょうか」と質問したことがある。
その役員は「家庭では再現できない味と雰囲気」と答え、例に「人気すし店」を挙げた。
当時はその通りだと感じたが、現在は“安心”の意味合いもあるだろう。
今回の外出自粛期間中、「人気カフェ店のECサイトでは、コーヒー豆やグッズが売れた」という話も聞いた。商品や公式サイトを通じて「ブランドとつながる」意識で、「あの人気店だから外れがない(はず)」という意味での安心だ。ロイヤルデリもロイヤルホストのブランドがあってこそ魅力度が増す。
現在の消費者が「レストラン」に求めるものは、実店舗での飲食体験という“脱日常”以外に、自宅で楽しむ“異日常”も強まったのだ。
55年前に「冷凍料理の時代が来る」と予言
同社にとって「ロイヤルデリ」は期待の星だ。縮小する外食市場に比べて中食市場(出来合い商品を自宅などで食べる)は成長余地がある。まだ事業規模は小さいが、うまく育てば「外食事業のリストラクチャリング(再構築)」の可能性を秘める。
創業者・江頭匡一氏(1923‐2005年)は、1965年の社内報で「アメリカなどはすでに家庭冷凍料理時代である。日本もやがてそうなる。共稼ぎのご夫婦など、あじけない晩さんの日々が多いのではないか」と記し、食卓の未来を予想した。