12年前のバイデンの立候補を知らない人々
民主党候補のバイデンは、バラク・オバマ政権時代に副大統領として人気を博したが、強烈なカリスマ性を持っている政治家ではない。2008年のオバマとヒラリー・クリントンが激突した民主党の予備選挙にも、立候補はしたものの早々に撤退している。このとき、バイデンが立候補していたことを知らなかった人も多いのではないだろうか。
今回の予備選挙でも苦戦しながら勝ち残ってきた。開始から3つ目の予備選挙が行われるまで負けが続き、バイデンの撤退が語られていたほどだ。最初のアイオワ州では、インディアナ州のサウスベンド市長で同性婚した38歳のピート・ブティジェッジが1位につけ、急進左派バーニー・サンダース上院議員に競り勝ったことが注目を集めた。革新派のエリザベス・ウォーレン上院議員が3位で、バイデンは4位に沈んだ。
「ここで勝つと候補者になる」とさえ言われるニューハンプシャー州の予備選挙でも1位サンダースと2位ブティジェッジが競り合い、ミネソタ州選出のエイミー・クロブシャー上院議員が3位で、4位はウォーレン。なんとバイデンは5位であった。次のネバダ州はサンダースが圧勝。14州の予備選挙が一気に行われた3月4日の予備選挙でバイデンは9勝を挙げ、ようやく民主党の候補者に決まったのだ。バイデンの熱狂が勝利したというよりも、他の候補者の資金力が続かずに脱落していった影響が大きかった。
ヒラリーとならビールを飲みたい
それに対して、トランプの存在感はよくも悪くもバイデンを圧倒している。
バイデンが民主党候補に決まった後も、「バイデンはどこにいるのか?」と新聞に書かれるほど存在感が薄かった。今回の選挙は、「トランプ対反トランプ」の戦いであって、「トランプ対バイデン」の戦いではないと言っていいだろう。アンチの存在が戦いを盛り上げる——2020年のアメリカ大統領選はこれを如実に示している。
では、4年前に遡っての質問です。
「トランプとヒラリーのどちらと一緒にビールを飲みたいですか?」
この質問を、2016年の大統領選挙前にも後にも、私は講演のたびにしていた。
「トランプ」と答える人が多かったが、ヒラリーもそこそこ人気があった。ヒラリーは働く女性の先駆けであるので、働く女性たちからは「ヒラリーに話を聞いてみたい!」という声もあった。アメリカ史上初めて主要政党が指名する女性大統領候補となった彼女は、不倫スキャンダルで弾劾訴追されたビル・クリントン大統領のファーストレディであるし、オバマ政権では国務長官の要職を務めた。聞きたいことがあって当然と思える。
仮に、「ヒラリーとトランプにバイデンを加えた3人のうち誰と一緒にビールを飲みたいですか?」と聞いたとしよう。おそらく、トランプ、ヒラリー、バイデンの順になるのではないか。